Amazonベゾス不倫騒動と、サウジ記者殺害をつなげる「デジタル監視」の実態世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)

» 2019年04月04日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

騒動の“黒幕”と指摘された「ある国」

 すると、一連の報道に対してベゾスが反撃を始める。米有名ブログサイトに、ナショナル・エンクワイアラー紙を発行するアメリカン・メディア・インク(AMI)から、記事の出版をめぐって脅迫されたと主張したのである。そして、冒頭で触れた通り、個人的に捜査チームを結成して、「どれだけ時間がかかってもいい」との指示のもと、捜査に乗り出していたのだった。

 そして今、新たな動きが報じられている。ベゾスの捜査チームを率いる人物で、作家でコンサル会社を率いるギャビン・デ・ベッカーが、米ニュースサイトに寄稿。彼はコンサルとして過去40年にわたってCIA(米中央情報局)やFBI(米連邦捜査局)などに捜査協力をしていろいろなケースを見てきたが、「最近、そんな私をも驚かすようなものを目にした。ナショナル・エンクワイアラー紙の親会社であるAMIが、米ワシントン・ポスト紙のオーナーである人物(ベゾスのこと)を含む米国人と米国企業に害を与えようと積極的に動いていたある国と結託していたのである」とぶち上げた。

 米国では、この記事がとんでもない指摘をしているとして騒動に発展している。

photo ベゾス氏による徹底的な捜査で分かったことは……(写真提供:ゲッティイメージズ)

 ベッカーの記事によれば、ベゾスの不倫記事が掲載された際、いくつもの米メディアで、すぐに誰がこのプライベートメッセージをタブロイド紙に提供したのかが報じられた。そして、その犯人は、不倫相手である元司会者の実兄だったと。

 筆者も確かに、そう指摘する記事をいくつも目にした。だが今回寄稿したベッカーはその話を一蹴する。情報を提供した兄というのはカムフラージュであり、兄を犯人にするのは「ウォーターゲート事件(米民主党本部で起きた政治スキャンダルでリチャード・ニクソン大統領が辞任する事態になった)を隠蔽(いんぺい)しようとした工作と同じ」にすぎないと指摘した。つまり、タブロイド紙側が意図的に「犯人は兄」という偽情報を広めており、その目的は、黒幕を隠すことにあるというのだ。真犯人は別にいる、と。

 そして、サウジアラビア政府の関係者が関与した可能性を指摘。「黒幕は彼らだ」とした。

 ベッカーはこう書いている。「われわれの調査員と何人かの専門家が、サウジアラビア人たちがベゾスの携帯電話にアクセスし、プライベートな情報を獲得したと自信を持って結論付けている」

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