実は、サウジ政府は、政府に批判的な活動家やジャーナリスト、元政府関係者などを監視していることが判明している。セキュリティ関係者らの間では、サウジはサイバー攻撃で、スマートフォンにアクセスした形跡などを残すことなく、テキストや写真、通話などにアクセスすることができると見られている。また位置情報や連絡先、カレンダーまで全ての個人データを手に入れることが可能で、マイクやカメラの機能を乗っ取って盗聴器にすることもできるという。
サウジがそうした不正アクセス、不正監視を実施できる裏には、イスラエルの企業の存在があるのではないかとの指摘も出ている。その企業とは、「NSOグループ」という企業で、同社が開発して、政府などに販売しているシステム「ペガサス」が、監視を可能にしているとされる。米メディアなどは、米国に亡命していたカショギ記者もサウジ政府にペガサスを通して監視されており、それが殺害計画につながったとも報じている(サウジは否定)。
ちなみに、ペガサスのシステムでは、攻撃の最初は電子メールから始まることが多い。明らかになっているその一例によれば、知り合いを装って、「家の前に変な車が止まっているのを見たから、写真に収めておいたよ」と、写真を見るためのリンクが付いたメッセージが届く。そのリンクをクリックしたら最後、相手のコントロール下に置かれてしまうという。
2010年に設立されたNSOはイスラエルのテルアビブに近いヘルツリーヤに本社を構えている。筆者もヘルツリーヤを訪問したことがあるが、海沿いに広がる新しい商業コンプレックスが数多くあるきれいな街だった。サイバーセキュリティ関連企業が多いエリアでもある。同社には現在、500人ほどの従業員がおり、そのうち半分近くがハッキングに特化した製品に携わるエンジニアだという。
地中海に面する小さな国であるイスラエルは、国を挙げてサイバー分野にかなり力を入れており、徴兵制を活用しながら、スタートアップ企業の育成・援助を行ってきた。NSOグループも、元はイスラエル軍でサイバー作戦を担う「8200部隊」の関係者による資金援助などで作られた企業だ。
その技術力の高さゆえに、NSOグループは、自社のシステムを販売する相手を精査し、販売には政府による承認が必要になっている。同社の方針では、基本的に売却先は政府または各国の捜査当局や情報機関などに限定され、契約時には監視対象をテロ集団や犯罪組織に限るよう約束を交わしているという。
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