サービスの利用履歴や利用者の本人確認状況(KYC)などをブロックチェーンに書き込むことで、パートナーなどが広く利用できるプラットフォームの構築を目指す企業が現れた。ブロックチェーンロック(東京都千代田区)は、4月8日、スマートロックの新製品を発表するとともに、ブロックチェーンを使った今後のサービス展望について話した。
「パートナーと共同で使うようなブロックチェーンを作っていく」。ブロックチェーンロックの岡本健CEO(最高経営責任者)は今後の展望をこう話す。
現在のプロダクトは、ブロックチェーンロックのサーバでアクセス権を管理する一般的なスマートロックだ。スマートフォンのアプリを使って、ドアの開閉を行えるほか、民泊などでの利用を想定して、部屋の予約からカギの開閉権の提供まで一括して行えるサービスを提供する。
6月に開業するホテルREYADO九段下や、10月開業のYoloホテル大阪への導入も決まっている。「安全、ローコストな施設運営ができることが評価された」(岡本氏)
一般的なスマートロックとの違いは、本人確認状況(KYC)や宿泊記録などにブロックチェーンを使っていることだ。イーサリアムのブロックチェーン技術をベースにカスタマイズしたものを使い、ブロックチェーンロック内で動作するプライベートチェーンとして運用する。
ここではブロックチェーンは基本的には分散型データベースとして利用されている。独自の電子マネーも提供するが、こちらも残高をブロックチェーンに記録する形で運用されており、トークンなどを発行しているわけではない。
「通常のデータベースを使うのに比べて、運用コストは数倍かかる」と、岡本氏はブロックチェーンを使えば安くなるわけではないと話す。ではなぜブロックチェーンなのか。「業界の共通基盤となるブロックチェーンを目指す」(岡本氏)のが狙いだ。
各種のデータをブロックチェーンに記録することで、パートナー企業もブロックチェーンにアクセスし、データの読み取りや記載が可能になる。例えば本人確認状況はハッシュ化してブロックチェーンに記録するため、パートナー企業は新たに本人確認を行わなくても本人確認が済んでいると分かるなどのメリットがある。ブロックチェーンの特性上、改ざんが難しいため、共通基盤として信頼が得やすいと判断した。
ブロックチェーンの実利用では、ユーザーが秘密鍵を紛失すると復旧が難しいなどの課題があるため、東京工業大学の田中圭介教授および野村総合研究所と共同で、秘密鍵を分散して管理し、リカバリーできるサービスの研究も進めている。
急速に盛り上がった仮想通貨とブロックチェーンだが、新たにトークンを発行するようなガチガチのブロックチェーン関連プロダクトではなく、ブロックチェーンの特性の一部をうまく利用するプロダクトが、徐々に登場し始めている。
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