英国では1億超の非課税枠 つみたてNISAの恒久化目指す 金融庁遠藤長官(2/3 ページ)

» 2019年04月22日 11時08分 公開
[斎藤健二ITmedia]

運用機能付き保険商品に課題

 金融機関は顧客本位の業務運営を怠ってきた?

遠藤長官 顧客本位の業務運営には力をいれている。「やっていない」と金融機関に言うと、金融機関はみんな文句を言う。金融機関にはどうしても収益目標がある。それは悪いことではない。会社を持続可能にするのは大事。でもバランスの問題だ。

 目の前のお客様に、いい商品を提供しようということと、会社として収益を上げるためにできるだけ手数料の高い商品をお勧めしようという、その間にある。お客様を優先したほうが、最終的には収益も上がる。いまはあまりにも収益のほうを重視している。そこを変えてくださいと言っている。

 投資信託販売にも問題がある。投資家は、新しい投資商品を求める。ITとかAIとかに関する、流行しているテーマに関連する商品だ。だから「新しい商品を作りました、去年作った商品は古いんで新しい商品を買いましょう」、そういう商売になってしまう。回転売買だ。

 でも、新しい商品はお客様が求めているんだ、そういう議論になる。販売窓口は金融リテラシーをぜひ高めてほしい。どういう考えで投資をすべきかをお客様に示唆してほしい。短期的に、「いまこれがもうかりますから、買いましょう」というのは、結局お客様のためにならない。ではなぜやるのかというと、手数料を得るためじゃないかと思ってしまう。

 窓口の回転売買、高い手数料を取っているのではないかという話は、投資信託だけでない。特に外貨建ての保険商品は、投資信託以上に販売窓口に手数料が入る。その構造は開示すべきじゃないかと思っている。しかも分かりやすい形で開示すべきだ。

 お客様は保険というよりリターンのできるだけ高い運用商品がほしい。外貨建て保険商品はある意味運用商品だ。投資信託と外貨建て運用商品の2つを比べた場合、保険会社と議論すると、「うちは保険商品ですから。保険の補償機能が入っているので比べられない」と言う。それは資産運用の機能の部分だけ比べてくれればいい。同じ計算をすると何%になるのかを、比べて分かりやすくお客様に示せばいい。

 保険商品は、それにプラスアルファの保障機能が乗っていますよ、という形で、投資信託と外貨建て保険商品を示して、お客様に決めてもらうのが本来ある姿。いまはそうなっていない。外貨建ての場合、為替リスクがあることをしっかり説明できているかにも、かなり疑問がある。

 保険会社は、「パンフレットなら目論見書を見れば分かります」というが、それは非常に難しい。読み解くのは、我々だって難しい。読み取って、比較対象となるような投資信託とどこをどう比べたらいいかは、これはまた難しい。

 欧州では、新しい規則の中で、1つのフォーミュラ(書式)にさまざまな商品を書き込む。リターンならリターンで簡単に比較できる。日本も完全に同じにはできないかもしれないが、資産運用を求めるお客様が、窓口で極めて簡単に比較できるように、そういうフォーミュラと説明態勢を作らなければいけない。

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