豊洲市場の吉野家が面白い 「時給1500円」に「超少ないメニュー数」ここにしかない要素が満載(3/5 ページ)

» 2019年04月29日 05時00分 公開
[昆清徳ITmedia]

豊洲市場店はどんな場所にあるのか

 それでは、築地市場から移転してきた豊洲市場店はどのような場所にあるのだろうか。実際に訪問してみた。

 豊洲市場はゆりかもめの「市場前駅」の目の前にある。記者が訪問したのは4月8日月曜日の午前11時頃だったが、市場前駅から多くの観光客が専用通路を通って豊洲市場に移動していた。

 豊洲市場は道路を隔てていくつかの棟に分かれている。豊洲市場店は「水産仲卸売場棟」3階にある飲食店エリアの一角にある。同エリアを歩いてみると、寿司店には観光客が行列をつくって並んでいた。一方、とんかつ店や中華料理店などはそれほど混雑していない。店内の様子を伺ってみると、長靴を履いて頭に鉢巻きをしている男性らが黙々と食事をしていた。特に大きな手荷物も持っていないので、観光客ではなく市場関係者なのは明らかだろう。

 多くの寿司店は2000〜3000円台の鉄火丼やにぎり寿司セットを提供しており、日常的に利用するような価格帯ではない。また、観光客の多くは新鮮な寿司や刺身を求めて豊洲市場を訪れている。観光客と市場関係者で利用する飲食店はハッキリと分かれているようだった。

豊洲市場店の店長に聞いてみた

 豊洲市場店はメニューや接客方法の点で、他の店とは違う運営方法をしているという。どのようになっているのか、店長の浅川健司氏に話を聞いた。

 営業時間は1号店のときと同様に、午前5時〜午後1時となっている。周囲の飲食店の中には午前10時頃に営業を開始するところもあるが、あくまでメインのお客は市場関係者を想定しているのだ。24時間営業をしていない吉野家の店舗は他にもあるが、午後1時に閉じる店は珍しい。

 豊洲市場店は提供するスピードの観点から、メニュー数がかなり少ない。「ここまでメニューを絞っているのはここだけです」(広報担当者)。他の多くの店舗では、さまざまな定食メニューを提供しているが、豊洲市場店のメインメニューは「牛丼」と「サラシア牛丼」(血糖値の上昇をおだやかにするサラシノールを配合したもの)くらいで、残りはお新香やみそ汁などのサイドメニューだ。「注文の99%は牛丼ですね」と浅川店長は語る。

 お客に占める市場関係者の割合が高いのも豊洲市場店の特徴だ。「毎日のようにくるお客さまがいらっしゃいます」(浅川店長)。常連客が注文するメニューはほぼ同じなので、浅川店長は「(注文を)言われなくても提供するのが目標」と語る。ミスター牛丼の魂はこの店でも受け継がれているようだ。

 ピークタイムは午前6時〜8時の間だ。店の外に行列ができるほどではないが、席は常に埋まっている状態だという。テークアウトの牛丼を注文するお客は全体の2〜3割を占める。店内で食べている暇もないほど忙しい市場関係者が購入していく。さらに、とにかく多忙なせいか「早食い」のお客が多いという。牛丼が提供されてから2〜3分で食べ終わる人もいるのだとか。

 豊洲市場店は日曜日以外は営業しているが、最も混雑するのは土曜日だ。日曜日の前に、鮮魚などを買い求める料理人らが豊洲市場を訪れるからである。

photo 豊洲市場店のメニュー

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