宿題もなく、クラス担任もなく、中間・期末試験もない――。学校の「当たり前」を見直し、メディアや教育関係者、保護者などから注目されている公立中学校が東京都にある。千代田区立麹町中学校だ。
なぜこのような大胆な改革を進めているのだろうか。麹町中学の校長である工藤勇一氏に、3回に分けてその真意を語ってもらった。記事の前編(なぜ宿題は「無駄」なのか?――“当たり前”を見直した公立中学校長の挑戦)では、宿題を廃止した理由について語ってもらったが、今回は定期考査を廃止した背景に迫る――。
中間・期末テストなどの定期考査の全廃も行いました。
「麹町中で中間・期末テストをなくす」という話を聞いた他校の校長が、「工藤校長の学校、定期考査を廃止したって本当? そんなことやって大丈夫なの?」と電話をしてきました。「本当だよ」と、私が廃止の理由と狙いを説明すると、その校長は驚きながらも納得していました。
私が定期考査をなくそうと考えたのは、宿題と同様、目的を達成するための手段として適切ではないと感じたからです。
皆さんの中高生時代を思い返してみてください。定期考査前の1週間、日頃の遅れを取り戻すべく躍起になって勉強し、テストに出そうな部分を一夜漬けで頭にたたき込んだ記憶はありませんか。そうした定期考査前の学習パターンは、今の生徒たちも何ら変わっていません。
一夜漬けでの学習は、「テストの点数を取る」という目的においては有効ですが、学習成果を持続的に維持する上では効果的とは言えません。テストが終わったら、かなりの部分は忘れてしまうからです。そうしたプロセスを経て獲得した点数・評価は、その生徒にとっての「瞬間最大風速」にすぎず、それをもって成績をつけたり、学力が付いていると判断することは、適切な評価とは言えません。
さらに言えば、一夜漬けで片づける「悪癖」がつくことの弊害も小さくないと思います。
私も大きな仕事があるのに締め切り近くまで着手せず、直前になってから「やっつけ仕事」で片づける傾向がかつてはありました。言い訳をするようですが、こうした習慣も中高生時代の定期考査対策を通じて身に付いたものではないかと思うことがあります。教員の多くは定期考査の「勝ち組」です。自らの成功体験を客観視して、それを否定的に見ることは難しいものです。自分がそうしてきたように、子どもたちにも成功体験を積んでほしいと思うのではないでしょうか。
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