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公立中学校長が定期考査を「全廃」した理由――成績を“ある時点”で確定させることに意味はない麹町中学・工藤勇一校長の提言【中編】(2/4 ページ)

» 2019年05月09日 05時00分 公開
[工藤勇一ITmedia]
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法律や規則で定められているものではない

 そうした弊害を考慮し、赴任2年目から1学期の中間考査を廃止し、まず、年5回あった定期考査を年4回としました。このこと自体は、2002年の学校週5日制導入以来、授業時間の確保を目的に他の学校でも行われていたので、割とスムーズに移行できました。

 続いて、美術の定期考査を廃止し、実技や成果物で評価をする形に切り替えました。そして、赴任5年目の18年度から、全学年で中間考査・期末考査を全廃しました。「全廃」と聞いて驚く教員もいましたが、その趣旨と狙いを説明したところ、多くの教員は納得してくれました。

 日本の中学校の多くは、1学期と2学期に「中間考査」「期末考査」を行い、3学期に「期末考査」を行っています。「中間考査」は主要5教科、「期末考査」は音楽、美術、保健体育、技術・家庭の4教科を加えた9教科というのが標準的な形ではないかと思います。 この仕組みは、法律や教育委員会規則などで定められているものではないのですが、不思議なくらい全国どの中学校にも共通しているものです。

 なぜ、どの学校もこうした形式を採用しているのでしょうか。

 端的に言えば、これも「通知表をつけるため」です。定期考査の点数で生徒を序列化し、中学校なら「5〜1」の評定をつける。そうした仕事を進めていく上で、定期考査は都合のよい仕組みとなっています。

 そもそも学力を「ある時点」で切り取って評価することに、意味があるのでしょうか。たとえ中間考査が行われる5月下旬時点で解けなかったとしても、7月下旬までに完璧に習得していれば、通知表に「5」をつけてよいのです。学習に「早い」「遅い」は関係ありません。

photo 点数で生徒を「序列化」する定期考査は、学校にとって都合のよい仕組みだ(写真提供:ゲッティイメージズ)

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