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DMM亀山会長らが語り合う「10年後のパラダイムシフト」――世界の“インフラ勢力図”はどう変わるのか?覇権争いは原発からクラウドへ(3/5 ページ)

» 2019年05月17日 05時10分 公開
GLOBIS知見録

「IT業界」と「米中冷戦」は密接に結合している

田中良和氏(以下、敬称略): 僕の最近のテーマは米中冷戦です。米中冷戦とIT業界は密接に関連しているというか、米中冷戦というのはもうIT業界の話だから。去年、個人的にウケた話があります。世間では「ファーウェイは危ないかも」なんて話がメディアでもよく書かれていましたよね。でも、ファーウェイが広まったらヤバイという空気のなかでソフトバンクの通信障害が起きた。ソフトバンクはエリクソンの通信機器を使っているんですが、その機器のOSアップデートか何かに失敗して10カ国ぐらいで通信キャリアがふっ飛んだ、と。ファーウェイが危ないと思ったらエリクソンが危なかったという。「そっちが止まってんじゃん!」って(笑)。

phot グリー会長兼社長の田中良和氏

國光: しかもテロかと思われたりして。

田中: そう。「テロか!?」ってことで一時ざわついたんですが、単なるアップデート失敗だった。でも、これは逆に言うと悪意がなくてもOSアップデートごときで止まるという話ですよね。じゃあ、悪意があったら何が起こせるのか。もう果てしない話になる。去年の通信障害ではその実証実験が行われたようなもので、「こういうのは危ない」という風になるなと思ったのが去年面白いと感じたトピックです。

岡島: ああいうことがあっても「エリクソンだから大丈夫」と思われていますが、ファーウェイでOSアップデート失敗となったら、ちょっと受ける印象も違うというか。

田中: そう。そもそもイデオロギーの話だったはずなんですけれども、結局は信頼関係の話になるじゃないですか。ファーウェイがOSアップデートで止まったら、「こいつら何かやったのか?テロか!?」となる。結局、信頼の基盤がない人たちにITの基盤を渡していいのかという議論になるんです。その意味で、IT業界と米中冷戦は密接に結合している、と。

國光: 通信ならまだしも、キャッシュレスとか信用とか、あるいはUberのようなサービスまで含めて全てのデータを取ることができるようになったら、もう軍事的な観点も含めた議論になりますよね。

田中: エリクソンやファーウェイでも困るけど、ある日突然Uberみたいなサービスが停止したら混乱しますよね。あるいは、水道や電力のクラウドを中国企業がやっていて、それで「ちょっとOSアップデートに失敗したから3日間電力が止まります」なんて話になったら大変じゃないですか。「本当か、お前ら!?」と。

岡島: デジタルの活用というのは、これまでのカジュアルな領域から、今は例えば医療系ですとか、シリアスなエリアにどんどん広がっていますよね。ライフサイエンスに関わる領域でそういうことが起きると本当にまずい。

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