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DMM亀山会長らが語り合う「10年後のパラダイムシフト」――世界の“インフラ勢力図”はどう変わるのか?覇権争いは原発からクラウドへ(4/5 ページ)

» 2019年05月17日 05時10分 公開
GLOBIS知見録

「データ版ブロック経済圏」形成へ

田中: さらにその先でもう1つ、面白いと思うことがあるんです。国にはそれぞれ規模がありますよね。ただ、ある程度はデータの量がないと成り立たないサービスってあると思うんですよ。例えば人口が小さな国で交通関連のサービスをつくろうとしても、データが足りなくてAIで最適化されないから成り立たないというような。

 となると、いくつかの国はデータを集合させたうえで、同じAIシステムやクラウドをつくらないとコストが合わないなんて話にもなると思います。だからイデオロギーの違いがセキュリティ問題になった次は、ある程度の国が集合してインフラを共通化するようになる。その意味では、ブロック経済のデータ版みたいなことがこれから生まれるのかなと思っています。

 さらに言えば、それで中国圏と欧米圏みたいなものに分裂したあと、次の主戦場は第3国になるというか、新興国に対するインフラの供給戦争がはじまると思うんですね。その品目は昔であれば原発だったりしたけど、今どきは原発をつくられるよりアフリカ全土で水道のクラウドを握られたりするほうが危ない。明日水道が止められたら困るじゃないですか。だから、ナショナルセキュリティに関連するような領域を含めて、ありとあらゆるものをクラウド化させて、例えば南米なんかに売りつけるという戦争ははじまると思うんですよね。そここそが次のテーマとして面白くなると思っています。

岡島:経済圏の覇権争いみたいなものが、地図のうえでも見えてくるような。

田中:そう。昔はドルを広めたりする戦いだったのが、今後はそうしたインフラを広める戦いになるのかな、と。もちろんドルを握られても困りますけど、水道や電力や交通インフラを一発で止められるのもクリティカルなので。

岡島:そのなかで田中さんはどうするの?

田中: 僕はそういうことに関わらず、VTuberで頑張ります(会場笑)。ただ、うちの会社の話と関係なく、これはビジネスチャンスなのかなと思うことはあります。今はサプライチェーンの分断というか、「中国のモノをアメリカに輸入するな」みたいな話になったりしていますが、そうなると今度はクラウドの分離みたいなものがはじまると思うんですよね。「中国でつくっていた半導体をアメリカでつくろう」なんて言って中国のテクノロジーを全て排除していくと、今度は西側で全てつくらなきゃいけなくなる。だから日本企業としては西側の下請け企業として再度頑張ろう、みたいな(会場笑)。「今までは中国に発注していたけど、ちょっと危ないからベトナムか日本かな。じゃあ、安いから大田区に発注しておこう」と。

岡島: また自前主義的な話に戻るという感じですか?

田中: 信頼できない国に発注できないという議論にはなると思います。ただ、こういうことを言うと、「田中さんは世界の分断を煽っているんですか?」なんて言われますけど、別に煽っているわけじゃなくて、解説しているだけなんです。

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