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社員同士でボーナスを贈り合う「第3の給与」 ユニークな発想がもたらした意外な効能とは?お礼の原資は会社負担(2/3 ページ)

» 2019年06月17日 08時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

社員同士が相互に報酬を出し合うことで見えてくる社内の動き

 Uniposでは、導入企業が設定した独自のポイント(ピアボーナス)を毎月一定量、各従業員に割り当てる。従業員は、お礼のメッセージとともに他の社員にポイントを付与する権利が与えられる。

 基本的な仕組みはこれだけだ。

 かつてならば、手伝ってくれたお礼に目の前で缶コーヒーをごちそうすることもできたかもしれないが、IT化された現代のコミュニケーションシステムでは、必ずしも顔を突き合わせて仕事をしているわけではない。

 そこで、ちょっとした業務上の疑問や障害に対し、何らかの手伝いをしてもらった社員が、「ありがとう」とコーヒー代程度のポイントをご褒美として送る。昔ならば当たり前だった「ありがとう」を形にする文化を、現代的なコミュニケーションのシステム上で実現しようというわけだ。

 こうしたやりとりは社員全員が見えるオープンな場で行われ、アクションに共感した人は、“拍手”でそれを示すこともできる。同社はこれを「うれしさの伴った新しい給与体験」と呼んでいる。

 しかし、金額に上限が設けられているとはいえ、社員同士がお金を贈り合うことにはいくつもの懸念が思い浮かぶのではないだろうか。

 相互に贈り合えるポイントの総量は、従業員が所属する部署や役職などに応じて自由に設定できる。とはいえ、友人同士で予定調和的に贈り合うのでは、単なる福利厚生の仕組みでしかない。

 ところが、実際に一部で導入されているトヨタやDeNAといった企業での事例からは、予定調和的に友人同士で贈り合うといったことはなく、むしろ、異なる部署間のコミュニケーション、助け合いを促す効果が得られているという。

 試験的に導入すると、組織的には遠い位置にいる社員の困りごとも、ふと目に留めた人間がアドバイスする事例が増え、結果的に導入する部署を拡大する企業がほとんどなのだそうだ。しかし、こうした社内コミュニティーの活性化、緩やかな連携の強化といった側面は、実はUniposのごく限られた側面でしかない。

 ポイントをどのように贈り合っているかは、どのように助け合っているかを示すことと同義だ。つまり、Uniposの利用状況を分析することで、組織がどのように動いているのか、その実態が見えてくる。

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