「闇営業」の原因は、日本の芸能ビジネスの「中抜き構造」にあるスピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2019年07月02日 07時22分 公開
[窪田順生ITmedia]

反社の人間と芸人は「似た者同士」

 今回の騒動を受け、吉本興業はコンプライアンス研修などを強化して、反社会勢力を排除すると宣言をした。が、多くの人が指摘するように筆者も不可能だと思っている。

 若いころ、取材でヤクザの人たちとよく会った。そこで必ずと言っていいほど聞かされるのは、どこの芸能人を知っているとか、若いときに面倒をみたとかという話だ。中には、一緒におさまっている写真などをちらつかせ、金にならないかとそのものズバリの「商談」を持ちかけてくる方も珍しくない。

 何が言いたいのかというと、こういう世界に生きる人にとって、「有名人とのつながり」は必要不可欠なブランディングだということだ。これは、反社会勢力の人たちが反社らしくあるためには、決してなくなることはない。

 ということは、吉本が何をどう宣言しようが、反社側からの芸人へのアプローチも決してなくならないということだ。彼らは素性を隠してあの手この手で接近してくる。これを100%防ぐことは、ほぼ不可能なのだ。

 だからこそコンプライアンス研修を徹底してだな、という危機管理の専門家もいらっしゃるだろうが、そのような付け焼き刃的な知識を芸人に持たせたところであまり役に立つとは思えない。反社側は、芸人をどう口説けば転ぶのか、どうアプローチすればついてくるのか、ということを手にとるように理解しているからだ。

 なぜかというと、反社の人間と芸人は「似た者同士」だからだ。

 よく言われるように、ヤクザも一人前になるまでは「部屋住み」というタダ働きをさせられる。当然、吉本芸人と同じく契約書など存在しない。金を生み出すことができるかどうかも分からぬ修行中の身なので、とにかく事務所に置いてやるだけでもありがたく思えというわけだ。これは、売れない芸人がライブに出させてやるだけでもありがたく思えという感じで、数百円の報酬しかもらえぬ「事務所預かり」という立場で下積みをする構図と丸かぶりだ。

 では、一人前になったらなったで報酬がたくさんもらえるのかというと、そんなことはない。組の看板を背負ってシノギを削っている以上、そこで得られたカネのほとんどは、組に上納金として献上をしなくてはいけない。自分で払っているわけだが、構図としては、ガッツリ稼いでも、「吉本組」に多額の上納金をガッツリと収める芸人とよく似ているのだ。

 「同じ釜を食った仲間」という言葉があるように、似たキャリアパスを歩んで一人前になった人たちはウマが合う。どういう苦労をしてきたのか分かるし、仕事に対する価値観や、組織や上下関係への忠誠心がよく似ているからだ。

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