「後払い」は“情弱向けサービス”なのか CASHの光本氏に直撃旅行後払いの「TRAVEL Now」も話題(3/3 ページ)

» 2019年07月18日 07時05分 公開
[服部良祐ITmedia]
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「業界は変わらざるを得ないタイミング」

――話が変わりますが、光本さんは他にもユニークな施策を打ち出しています。6月には、手持ちの不要な物品を撮影して写真を送ると、モノやサービスの支払いに使える「モノ払い」サービスを打ち出しました。5月発刊の著書『実験思考』では、電子版をいったん無料で購入後、支払う額を決めてもらうという売り方で話題になりました。狙いは何だったのでしょうか?

光本: 内容に関しては、私が今までどんなスタンスで事業を作ってきたか、本にしてもらい販売しました。いろんな出版社から声を掛けてもらった中で、箕輪厚介さん(NewsPicks Book創刊を担当)から熱いアプローチをもらいました。

 出版業界に(もともと)関心があったので、「この売り方でやらせていただけるのであれば」と言ったら、OKをもらいました。本を出版したかったというより、本の売り方を試したかったのです。

 コンテンツビジネスは、映画も本もそうですが、あらゆるものに決まった価格があります。しかし、コンテンツに触れる人々(読者・視聴者)にとって、その内容の価値は違うと思います。仮にコンテンツの価格を無料にして提供して、価値がある(と思う)価格を自由に決めてください、と。

――光本さんらしい、話題を呼ぶ画期的なアイデアと感じます。一方で、出版やメディアの業界では、「情報が無料」になることでその質が大幅に劣化したり、必ずしもマスには受けなくとも一定数売れて文化を維持してきたようなコンテンツが、無料化や「話題性重視」の流れに合わず淘汰されるなどといった、危惧を抱く意見もありますが。

光本: 私は出版ビジネスのど素人なので、たぶんいろんな思いや考え、こだわりを持つ人もいると思います。私の安易な言い方でそういった人々を不快にしないよう慎重な言い方になりますが、どの業界でも「そう」なのです。

 私の売り方やこの本に対して「出版業界が大打撃になる」と感じるのであれば、(業界側が)変わらざるを得ないタイミングかなとも思います。ちょっと違うやり方を(私が)やらせてもらって、それが煙たがられているのであれば。

 しかし、それが消費者に支持されているのであれば、(私は)「消費者がどうしても正しい」と思うので、今の消費者の価値観、好まれるやり方にビジネスを変化させなくてはいけないと思います。出版業界だけでなく、普遍的な話だと思います。

 私が今回やってみた実験も正解ではない気がします。今は「無料でコンテンツを提供するのが正解かどうか」という話になっていますが、消費者は思っている以上に頭がいいし、無料だから食いついてくれる時代ではない。無料にすれば正解というわけでもないし、今回がベストな方法だとも思いません。2回目を出すときは同じ方法は取りませんね。

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