ソニーが高度人材を確保するため、新入社員でも最大で730万円を支払う新しい給与制度をスタートさせる。優秀な人材が海外の企業に奪われるのを防ぐことが目的だが、果たして効果を発揮するのだろうか。
ソニーは、日本企業の中では成果報酬について前向きな企業であり、これまでも仕事の役割に応じた等級制度を採用してきた。今回の措置は、既に存在している等級制度を活用し、一律で等級を付けていなかった新入社員にも状況に応じて等級を付与し、高い賃金を支払うというものである。
同社の大学院卒新入社員の年収は約600万円だが、今回の措置によって、最も優秀な社員の場合には2割ほど増えて730万円になる。
厚生労働省の調査によると、2018年における日本の大卒初任給は20万6700円、大学院卒は23万8700円だった。10年前の08年は大卒が19万8700円、大学院卒が22万5900円とわずかに上昇はしているものの、ほぼ横ばいに近い。
日本のGDP(国内総生産)が伸びない中、賃金も上昇しないという図式だが、同じ期間で諸外国は経済規模を大幅に拡大させており、それに伴って物価や賃金も上昇している。
これに加えて企業活動のグローバル化が想像以上のペースで進んでおり、世界基準における優良企業であれば、企業の国籍に関係なく給与水準は同一レベルに収束するようになってきた。かつては、新興国にある優良企業と先進国にある優良企業との間には、大きな賃金格差があったが、その差はかなり縮小したと思って良い。
グローバル企業の場合、大卒の技術系新入社員に年収600万円を提示することは特段、珍しいことではない。現在、安全保障問題で米国から制裁を受けている中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術)の日本法人は、2年前の17年に新卒の学生に対して約500万円の年収を提示していた。中国のメーカーですら、この金額を出していたという現実を考えると、年収600万円というのは特別に高い水準ではないということがお分かりいただけるだろう。
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