3月、業績手続きのオンライン化を目指す「デジタル手続き法案」が部分的に見送られることになった。印鑑の存続を求める業界団体から反対の声が上がったことが原因である。
ネットでは旧態依然とした業界の対応を批判する声がもっぱらだが、日本には「総論賛成、各論反対」というキーワードがあることからも分かるように、普段は他人の利権に批判的でも、いざ自分の利害が関係すると、手のひらを返したように新しい仕組みを全否定する人が多い。
手続きのデジタル化は当然、進めるべき事項だが、今回の話は、日本人全員が他山の石とすべき出来事といってよいだろう。
日本はこれまで行政のIT化にはあまり積極的ではなかったが、政府もようやく重い腰を上げ、業績手続きのオンライン化に向けた取り組みをスタートしている。2018年7月には「デジタル・ガバメント実行計画」を策定し、今国会にはデジタル手続き法案が提出される予定となっていた。
ところがこの法案に待ったがかかった。
同法案には法人設立に際して印鑑の義務化を無くすプランが盛り込まれていたが、印鑑の製造業者などがこの内容に反発。結局、自民党の部会はこの条項を削除する形で法案を了承し、押印の是非については今後の議論に委ねられることになった。
印鑑の製造業者などで構成する全日本印章業協会など複数の団体は、デジタル・ガバメント実行計画の策定と前後する形で政府に対して要望書を提出している。協会では、実行計画に盛り込まれた以下の3項目について反対を表明している。
1つ目は行政続きにおける「本人確認押印の見直し」、2つ目は法人設立における「印鑑届出義務の廃止」、3つ目は「一般的な取引におけるデジタル化の推進」である。つまり、本人確認には引き続き印鑑のみを用いるべきであり、一般的な取引をデジタル化することには反対するという主張である。
具体的な政府への要望としては、「法人設立における印鑑届出義務の廃止」についての再考や、民間における手続きオンライン化推進の白紙撤回、さらには、これらが実施されなかった場合、印鑑業界が受ける損失について政府が金銭的な補償をすることまでも求めている。
ネット上では、「あまりにも時代錯誤」などと、業界のスタンスに反発する声が圧倒的となっている。
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