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» 2019年03月22日 07時00分 公開

印鑑廃止、業界団体の反発で見送り これは「異常な光景」なのか?“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)

[加谷珪一,ITmedia]
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今も続く地方への補助金バラマキ

 都市部から地方への資金分配についても同じである。

 地方を疲弊させて良いと思っている人などいるはずもないが、だからといって無意味なバラマキが許容されるわけではない。だが現実には地域振興をタテマエにした事実上の補助金のバラマキは今も続いている。ふるさと納税制度も、本来、都市部に入るべき税金を地方に強制配分しているという点では、(寄付する人の気持ちが仮に純粋だとしても)制度的にはバラマキと何も変わらない。

 日本は人口が減少しており、周辺部から都市部に人口がシフトすることは原理的に避けようがない。本来であれば、都市部への人口集約がスムーズに進むよう環境整備を行い、一連の流れで転居を余儀なくされる人には、相応の補償をするという方向性で議論を進めた方が良いに決まっている。

 だが現時点においても、政府は人口減少で都市部への集約化が進むことを前提にしておらず、地域振興をすれば、どの自治体でも再生できるというタテマエで政策を立案している。こうなってしまうのも、維持が困難になる自治体からの反発が極めて大きいことが原因である。

 日本はドローン(無人機)については、世界でもっとも技術蓄積が進んでいた国だったが、「危険だ」「気持ち悪い」といった感情的な理由だけで法的な整備を遅らせてしまい、ほぼすべての市場を中国勢に奪われた。

photo 日本が技術的に優位だったのに中国勢に敗北したドローン市場(写真はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 原発輸出も同じである。採算性の悪化から欧米主力メーカーがすべて撤退する中、政府は業界からの要望を受けて原発輸出を全面的にサポートしたが、結局、すべての日本メーカーが海外ビジネスからの撤退を余儀なくされている。

 時代の流れや技術の進歩から目を背け、現時点で得られる利益を最優先し、政府に何らかの対応や補償を要求するというのは、日本社会ではごく日常的な光景である。しかもほぼすべてのケースにおいて「この件は他とは違う」といった形で、自分たちだけは例外であると強く主張する。印鑑業界の動きは決して特殊なケースではないということを、私たちはよく認識しておくべきだろう。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。

 著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。


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