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» 2019年07月24日 07時00分 公開

東京医大・入試女子差別問題の陰にちらつく「ゆるふわ女医」とはフリーランス女医が本音で斬る(2/4 ページ)

[筒井冨美,ITmedia]

「女子差別」する現場のホンネ

 なぜ、医療の現場では女性が敬遠されるのか? やはり一般の企業同様に、産休・育休・育児時短による戦力低下や、それらのマネジメントの煩雑(はんざつ)さを避けたいからである。特に大学病院のような高度な医療機関では、「10時間以上の長時間手術」「徹夜の救急外来」「月10泊以上の産科当直」のようなキツい業務を、誰かが担わなければならない。女医が出産するからと言って、病院の患者数や手術件数を減らすことは、現在では不可能である。

photo 『女医問題ぶった斬り! 女性減点入試の真犯人』(光文社新書)。著者の筒井冨美氏は1966年生まれ。フリーランス麻酔科医。本業の傍ら、メディアでの執筆活動や『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(テレビ朝日系)など医療ドラマの制作協力にも携わる。主な著書に『フリーランス女医は見た 医者の稼ぎ方』(光文社新書)

 女医の産育休時短による戦力低下は、ただでさえ長時間労働が問題視されている同僚の勤務医がカバーすることが、今でもほとんどである。ゆえに病院側としては、一般企業同様に可能な限り“若い男”を採っておきたいのだ。

 2018年8月、タレント女医で元整形外科医の西川史子先生は、「(成績順に)上から採っていったら女性ばかりになってしまう」「眼科医と皮膚科医だらけになってしまう」「外科医は少ない、やっぱり外科医になってくれるような男手が必要なんですよ」とワイドショーで解説し、「(女性減点は)当たり前」「(東京医大に)限らない」「男女比を考えて採用するべき」と発言をして、物議を醸した。

 これに対して、「女性蔑視だ!」という激しいバッシングも多かったが、SNSでは「医療現場の現実を考慮した」のように擁護する匿名コメントも多かった。これも、医大入試を文字通りの学力試験と考えるか、「事実上の採用試験」と解釈するかの相違であり、一度は外科医への道を志した西川先生は後者と考えたからだろう。

 同じ頃、女性医師を応援するWebマガジンの「joy.net」では、女医を対象に「東京医大の女子一律減点」について緊急アンケート調査を行ったところ、65%の女医が「理解できる」もしくは「ある程度理解できる」を選択するという結果だった。

 この結果は、多くの一般人向けメディアでは驚きをもって紹介された。これも、一般人向けメディアが「医大入試とは大学入試の一種」と考えたが、医療現場を知る女医たちは「事実上の採用試験」と解釈してアンケートに回答したからだろう。

背景に大学病院の深刻な医師不足

 この女性減点入試、すなわち水面下の男性医師確保策が広まった一因は、04年の新研修医制度導入による大学病院の深刻な医師不足である。

 それまでは慣習的に、医大を卒業した新人医師の7割以上が母校の附属病院へ就職して、医師キャリアの第一歩を踏み出すことが一般的だった。大学病院における医師確保は困難ではなかったので、えげつない男性優遇入試に手を染める必然性はなかった。

 しかし、この制度改定を契機に、大学病院で初期研修をスタートする医師が年を重ねるごとに減ってゆき、19年度内定者では40.3%にとどまっている。

 また、初期研修の2年間は、特定の医局に属さずに研修中心の生活を送るので、実質的な附属病院のマンパワーにはなりにくい。厚労省の医師需給分科会でも「1年目0.3人分、2年目0.5人分」として、医師としてのマンパワーを計算している。

 15年施行の女性活躍推進法、17年の改正育児・介護休業法など、近年は日本の随所で女性進出が進んでいるにもかかわらず、04年頃まで増加の一途だった医師国家試験合格者における女性率は、新研修医制度開始以降はピタッと増加が止まってしまった。女性減点入試も、第三者委員会の調査では、東京医大は06年から、順天堂大では遅くとも08年から始まったことが判明している。

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