“ウナギ密漁”の実態を追う――「まるでルパン三世の逃走劇」「土用の丑の日」に憂う【中編】(2/5 ページ)

» 2019年07月25日 05時15分 公開
[真田康弘ITmedia]

闇業者への密流通

 シラスウナギ漁には密漁に加えて、正規にシラスウナギ採捕の許可を持っている者が、正規の買い取り業者ではなく闇業者に流すという「密流通」の問題もある。これには、正規の買い取り価格が市場価格によって決定されておらず、闇価格と乖離しているという問題も背景にある。

 シラスウナギの流通は各地域により異なっている。筆者は高知県に足を運び、県庁や業界関係者に取材を試みた。高知県では、採捕の許可は県内漁協もしくは県内の同一市町村内に住所を有する者で組織する採捕団体に交付される。

 そもそも、シラスウナギの採捕は原則として禁止されており、限定的・例外的に採捕が認められる。これを「特別採捕許可」と言う。この「特別採捕許可」を受けた漁協や採捕団体は、集出荷業務を代行する「指定集荷人」を置くことができ、許可を受けた漁協や採捕団体ごとのシラスウナギの「採捕従事者」の数は、前年度の採捕従事者数を上回らないものとし、削減に努めることが求められている。現在、高知県内で採捕されたシラスウナギは、高知県漁業協同組合連合会及び高知県養鰻生産者協議会で構成する高知県しらすうなぎ流通センターへ出荷しなければならない(高知県「平成30年度うなぎ稚魚(しらすうなぎ)特別採捕取扱方針(内水面) 案」) 。

 つまり、高知県は漁協あるいは採捕団体にシラスウナギの特別採捕許可を出し、これにもとづいて指定集荷人をおき、県内に約2500人いる採捕者からシラスウナギを仕入れる。私がインタビューした四万十川流域でシラスウナギ漁をする採捕者によると、採捕を希望する者は適宜関係者に申し込んで採捕の許可を得るとのことだった。

photo 高知県「平成30年度うなぎ稚魚(しらすうなぎ)特別採捕取扱方針(内水面) 案」
photo 暴力団や役員が暴力団員などである団体が指定集荷人になることを禁じている

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