コラム
» 2019年07月25日 05時15分 公開

「土用の丑の日」に憂う【中編】:“ウナギ密漁”の実態を追う――「まるでルパン三世の逃走劇」 (1/5)

今年も「土用の丑の日」が7月27日にやってくる――。長年にわたってウナギを初めとした資源管理政策を研究してきた気鋭の研究者が、業界の闇に切り込む3回シリーズの中編。

[真田康弘,ITmedia]

 かつて、ウナギの稚魚を「密漁」していた当事者は、筆者の取材にこう打ち明ける。

 「あれはルパン三世を地で行っているようなものだった」

 密漁の捜査当局者に発見され、必死に逃れようとした状況を表したひと言だ。

 ウナギの稚魚であるシラスウナギ漁は通常夜間に行われる。「最高の条件は闇夜で大潮、中潮」とシラスウナギ漁関係者は語った。闇夜のなか、漁業者は夜の水面を集魚灯で照らしながら操業する。採捕が許可されている期間中であれば、誰が正規の漁業者で誰が採捕許可のない密漁者かは区別できない。

 「最盛期なら東京駅で特定の人を探すくらい(密漁者が誰かは)分からない。みんな暇なら周りを見ているけど最盛期はそんな余裕無いから」と関係者。ただし期間外なら話は別、見つからないよう、光量を落として操業だ。そんな中、密漁取り締まりに発見されてサーチライトを照らされて追跡され、必死で逃げ切ろうとしていた様が、さながら警察に追われる「ルパン三世」のようだったのだろう。

photo シラスウナギの「密漁」は闇夜のなか、水面を集魚灯で照らしながら行われる

「ウナギロンダリング」だけじゃない 暴力団も絡む密漁ビジネス

 記事の前編「絶滅危惧のウナギーー横行する“密漁・密輸”がもたらす『希望なき未来』」では、台湾から香港を経由した壮絶な「ウナギロンダリング」が行われている実態をお届けした。今回の中編では、筆者がウナギの密漁ビジネスの実態を追うために、高知県まで足を運んできた結果をレポートしたい。

 まず、密漁を行っている者の多くは一般人と思われるが、反社会勢力が関係する場合もある。例えば2018年、高知県警は無許可でシラスウナギ買い取り販売会社を高知市で経営していた男が、過去3年分で約6億2000万円の不法収益をあげていたとして国税当局に課税通報している。

 県内では5つのグループが密漁を仕切っており、山口組系組員がこのグループに密漁を認める代わりに高額な「場所代」を取り、課税通報された男が経営する会社に密漁したシラスウナギを卸していたという(産経新聞電子版2019年3月25日) 。

 17年には、高知地裁で暴力団員2人が、密漁によって漁業調整規則違反の罪に問われた事件で、懲役5カ月執行猶予3年の判決が下されている。通常、略式罰金で済むシラスウナギ密漁事案としては異例だ。16年11月には、県内で仲買人の事務所と元組員宅付近に火炎瓶が投げ込まれる事件が発生、県警はみかじめ料の支払いなどを巡るトラブルが背景にあるとみる(朝日新聞2018年1月11日) 。

 今年に入ってからも、茨城県ひたちなか署と県警指定暴力団山口組・神戸山口組対立抗争集中取締本部は、六代目山口組系暴力団員ら6人をシラスウナギ密漁の疑いで逮捕している(読売新聞2019年4月23日付)。

 県警組織犯罪対策課は「密漁は伝統的な暴力団の資金獲得活動だ。シラスウナギの買い取り業者は簡単にインターネットでも探せるため暴力団にとっておいしい話」と指摘する(読売新聞2019年6月26日付) 。反社会勢力関係の取材に詳しいフリーライターの鈴木智彦氏も「全国で暴力団排除条例が施行され、企業コンプライアンスの重要性が認知された現在、ここまで不正が常態化し、不透明な業界も珍しいだろう。センセーショナルに煽っているわけではない。……ここまで黒いとは予想外だった」(『サカナとヤクザ:暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う』小学館)と指摘するほど、この問題の根は深いといえる。

photo ウナギの稚魚が採捕されている高知県・四万十川の河口(筆者撮影)
photo 漁協による密漁に対しての注意喚起もされていた
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