“ウナギ密漁”の実態を追う――「まるでルパン三世の逃走劇」「土用の丑の日」に憂う【中編】(3/5 ページ)

» 2019年07月25日 05時15分 公開
[真田康弘ITmedia]

シラスウナギ漁業者の不満

 採捕されたシラスウナギはしらすうなぎ流通センターへ出荷される。高知県では養鰻業者間で最も高い値段を出した者からシラスウナギを流通センターから仕入れてゆく。流通センターがキロ当たり10万円の手数料を取り、指定集荷人は自分の利益分を差し引いた「浜値」で採捕者からシラスウナギを仕入れる。

 しかしこのシステムでは、シラスウナギの仕入れ価格に採捕者が関与できる余地が少ない。指定集荷人は流通センターでの価格に基づいて浜値を設定するからである。採捕者はいくら値段に不満でも、定められた集荷人に卸す以外にない。「シラスウナギを買っている側は何であんなに安く買うのだろうか」とこの採捕者は憤る。

 「全国相場の1割低いとかいうのならまだ良いが、半分とかも普通にある」とある別の関係者は言う。

 「高知県の養鰻業者は規模が小さくて、お金もないとか、いろいろな理由があるのだろうが、『なるべく安く買おう、安く買おう』とするのが見え見えだ。値段を上げたら買えないのが出てくるとか、なかには、これは養鰻業者のための採捕だ、安くするのが当たり前だ、というのが養鰻業者のほうから聞こえてきたりする。それはちょっといかがなものだろうか」

 これに比べて「裏のほうに流せば儲(もう)かります、はっきり言って」と先ほどの採捕者は断言する。価格差は、キロ数十万円から100万円くらいまであると言う。1匹の単価に直すと、130円〜150円ほどの差が出るそうだ。これでは密流通に流れるのは、経済合理性の観点からむしろ当然ともいえる。密流通の責任を採捕者側のみに帰するのは酷というものである。

 なおこうした問題は高知県に限らない。ウナギ養殖が盛んな静岡県、宮崎県、鹿児島県などでも採捕されたシラスウナギの県外流通が制限されており、これらの県では県内流通価格が市場価格より低く設定されている(海部健三『結局、ウナギは食べていいのか問題』岩波書店) 。結果、これがむしろ闇流通を促進させているとも言えよう。

photo ウナギの稚魚が採捕されている仁淀川河口(筆者撮影)

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