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瀕死のシャープを復活させた戴正呉氏が社長退任へ 後継者に求める条件は?単独インタビュー(1/2 ページ)

» 2019年08月08日 16時30分 公開
[大河原克行ITmedia]

 シャープの戴正呉会長兼社長は、2019年度中の社長退任を明確にした。2020年度(2020年4月〜2021年3月)を初年度とする3カ年の次期中期経営計画の内容を、今後決定する後任社長から発表する考えを示すとともに、「次期中期経営計画は、次期社長が推進するものであり、私はやらない」とした。

 また、次期社長の条件として、「プレッシャーに耐えられること」「広い事業領域の経験があること」「鴻海とのシナジーを生めること」「創業者の意識を自らが持っていること」の4点を挙げ、「まだ、その条件に合致する人は見つかっていない。アドバイザーを使って探している段階にある」と語る。次期中期経営計画がスタートする新年度までに、これらの条件に合致した次期社長を決めることになりそうだ。

シャープの戴正呉会長兼社長に単独インタビュー

 戴会長兼社長は16年8月にシャープの社長に就任した。就任前の15年度には、448億円の営業赤字と2223億円の最終赤字の計上とともに、430億円の債務超過に陥ったことで、16年8月に東証二部へと転落。そうした状況の中でバトンを受け取り経営を指揮した。16年度には早くも営業黒字に転換させただけでなく、2017年12月には、異例ともいえる1年4カ月間の短期間で東証一部に復帰。2017年度には、4年ぶりの通期最終黒字を達成し、シャープを復活させた。

 その後も、Dynabookの買収やASEAN、中国を中心とした海外事業の拡大などに取り組み、成長路線を歩んでいるところだ。シャープ社長就任前は、シャープを買収した鴻海精密工業の副総裁として、約19兆円企業となった同社の成長を支えた。

 戴会長兼社長は、「私がこれまで取り組んできた3年間は、“転換”の時期であり、事業を変革するための期間であった」としながら、「この3年間の中期経営計画は、私が責任をもってやる。一方で、2020年度からの3年間は、次の100年に向けた準備の3年間になる」と発言。さらに、「新たな中期経営計画は、次期社長から発表してもらうことになる。そして、次期中期経営計画は、次期社長がやることになり、私はやらない」と断言した。

 次期社長の条件には、4つの項目をあげ、それぞれについても説明した。

 「シャープは厳しい環境にあり、そのなかで経営を行うプレッシャーに耐えられる人材であること。私が社長に就任したときには、まだ何もやっていないのに、批判の記事がたくさん出た。こうしたプレッシャーに耐えられる人材でなくてはいけない。また、シャープは、白物家電、テレビ、パネル、半導体、太陽光発電と広い領域で事業をしている。単に、担当したというレベルではなく、事業を経験した人材が望ましい。そして、鴻海のいいところをシャープに生かすことができる人材であることも条件になる」とする一方で、4つ目の条件である「創業者の意識を持つ」という点について時間をかけて説明した。

 「日本の企業が強かった30年以上前には、日本の経営者の多くが創業者だっが、創業者が亡くなったり、次の経営者にバトンを渡したりした結果、サラリーマン社長ばかりになってしまった」と指摘し、「休暇を取ることは大切だが、経営者は365日休みがなくて当たり前。経営者には責任がある」とコメント。

 「シャープはグローバルでビジネスをやっている会社であり、日本の祝日だからといって休むわけにはいかない。ASEANの社員がミーティングをしたいといえば、それを優先しなければならない」などと語りながら、「シャープの創業者である早川徳次氏は、土曜日、日曜日をしっかり休むということはしていないはず。それは私も同じ。シャープの責任は全て私が持つ。同様に、私の後継者は、創業者の意識を持った人でなくてはならない」などと語った。

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