SNSやWeb上に個人が発信した情報などを元に、転職潜在層の人材に、企業のポストを紹介するマッチングサービスを手掛けるLAPRAS(東京都渋谷区)の島田寛基CEOは「人材系の業界は結局、『BtoB』(消費者でなく企業から料金をもらうサービス)なので、顧客企業からの売り上げを最適化すると今回の問題のようになってしまう。『C』(消費者)の利益が守られにくい構造ではある」と打ち明ける。「(企業と消費者の)どちらのユーザーを喜ばせたいか、ポリシーを明確化しないとリクナビに限らず陥る問題だ」とみる。
LAPRASは、まだ転職活動を始めていないエンジニアに、同社のサービスでその人の能力や経歴を知り評価した企業がスカウトのメールを送るといった、ユニークなマッチングを売りにしている。リクナビを始めとした一般的な会員制の就活サービスが採る、ユーザーに事前に個人情報提供などの規約に同意してもらう「オプトイン」という方式ではなく、事後に情報の利用を拒否するユーザーからの申し出を受け付ける「オプトアウト」を採っている。
ただ同社によると、やはり個人情報を分析して扱っているという点から、サービス開始当初はSNSで小さな“炎上”を何度か経験した。「法律上は問題ないものの、『何でこんな変なメールを送ってくるんだ』などと、感情的な反発はあった」(島田CEO)。
ユーザー側に不信感を抱かせず、個人情報の活用を納得してもらうためにはどうすればいいか。島田CEOは「個人情報を提供しているユーザーに、(サービスのメリットを)『還元』できる仕組みでないと、彼らは搾取されていると感じるだろう」と指摘する。
例えば、今回問題になった、リクルートキャリアが学生の内定辞退率の予測データを顧客に販売するサービスでは、学生側の得るメリットが見えにくく、逆に選考でバイアスがかかると思われた、とみる。
「今回、リクナビ側が出していた情報では、学生の感じる納得度は薄かったのかもしれない。(サービス提供側が)情報収集することでユーザーにもどんなメリットがあるか、説明すべきだった。例えば私たちのサービスも今回のようなケースを想定して、『転職活動していなくても企業と出会える』などと、ユーザー側のメリットを説明してきた」(島田CEO)。
就活支援サービスは、ほとんどの場合サービスのユーザー側は無料で、運営会社が顧客企業から料金をもらう仕組みを取っている。今回のリクナビの問題は、就活のサービスが「本当は誰のための物なのか」という問いを、人材業界に突き付けている。加えてユーザーにも、「自分の個人情報がどう分析され、使われているのか」に関心を持つ必要性を喚起しているとも言えそうだ。
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