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ホリエモン的“多動力”の逆張りで生きよう えらいてんちょうの“ショボい”キャリア論“静止力”で地方の名士になる!?(4/5 ページ)

» 2019年08月16日 07時00分 公開

ホリエモンは「必ず後処理をしている」

 もちろん、多動力を実践することで成功する人もいるでしょう。ただし、成功できるのはごく一部、本当に限られた人のみです。おそらく成功者の足元には、『多動力』に感銘を受けて行動したものの、成功できずに終わってしまう“多動難民”が、無数に転がっているはずなのです。

 多動力を実践する上で大切なのは、「必ず後処理をすること」です。自らの意思で選んだ仕事であっても、途中で飽きてしまったり、ほかにやりたいことを思い付いたりして、別の仕事に移ることもあるでしょう。それは仕方ないことだと思います。ただし、辞める際には、しっかりと仕事の後処理をしておかなくてはいけません。

 というのも、もしも多動を諦めたとき、自分が帰る場所がなくなってしまう恐れがあるからです。「この仕事はオレには合わない」「思っていた仕事と違うから辞める」などとロクに後処理もせず、次から次へと職を変え、ブラブラし続けている。そんな人に対する世間の評価は、当然ながら低く、信用されません。彼らを待ち受けているのは、居場所を求めてさまよう多動難民という結末なのです。

 なんだかんだいって、ホリエモンのスゴイところは、一度約束した仕事は必ず後処理しているだろうという点です。たとえば、AbemaTVの『ドラゴン堀江』は半年スパンの仕事で、多忙な彼がこの仕事だけに注力するのは難しかったはずです。それでも彼は、立派に番組として成立するレベルまで持っていったわけじゃないですか。

 彼はイヤだと思っても、引き受けた以上は必ず何らかの片を付けます。服役中も、メルマガを一度だって休むことなく配信していました。これは純粋にスゴイと思います。ただ単に何でもかんでも多動するのではなく、多動に伴う責任をまっとうしている。ちゃんと人から信用を得られるような行動をしているんです。

多動力は「健康な独身成人」にしか無理

 じゃあ、ホリエモンのように必ず後処理をすれば、多動でもいいじゃないか。そう思う人もいるでしょう。でも多動できるのは、青年時代のごく限られた期間だけなんですよ?

 そもそも多動力とは、健康な独身成人だけに許される、極めて特殊な思想です。次から次へと自分が好きなモノを求めて行動するためには、肉体的にも、精神的にも、金銭的にも、ありとあらゆる余裕が不可欠なんですから。

 私には妻と子どもがいますが、家庭を持ってからというもの、気軽にフラフラできなくなりました。海外はもちろん、地方への旅行すら行きづらい。これが1人だったら簡単なんです。思い立ったその日に家を出て、時刻表も調べず電車に乗ってもいいし、宿にしても目的地に着いてから探したっていい。

 しかし、家族連れの旅行となると、そういうわけにはいきません。ましてや幼い子どもがいるならなおのことです。長時間の電車移動は子どもがぐずって泣き出すかもしれないから、車にした方がいいだろうか。回りたい観光名所がたくさんあるけど、体力的に子どもじゃキツイかな……といった具合に、考えるべきことが多く発生します。ややもすれば「大変そうだから、やっぱり旅行は中止!」なんて結論にもなりかねません。

 このように、現在28歳の私ですら妻と子どもを持っただけで多動性が制限されてしまうのです。さらには、老齢の家族がいるから掛かりつけの病院に送迎しなくてはいけない、養うべき家庭があるから転職を躊た め躇ら ってしまうなど、家族が増えれば増えるほど多動性は制限されていきます。

 つまり、多動力を発揮して成功するという思想は、多動可能な人間だけを中心にしたもので、極めて視野の狭い未熟な思想なのです。そこで、先ほどよりももっと大きな声で、皆さんに次の言葉を贈りたいと思います。

“いま本当に必要なのは、多動力ではなく「静止力」である”

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