主要取引先に依存する経営への“警鐘” そごう倒産で破綻に追い込まれたアパレル企業に学ぶあなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る(9)(3/4 ページ)

» 2019年09月03日 05時00分 公開
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手形不渡りで提訴 「売掛金差し押さえ」へ

 その後、取引先への支払い額が増加し、資金繰りが急速に悪化していく。11年12月には、経営の健全化のために「バラクライングリッシュガーデン広尾店」「横浜バラクライングリッシュガーデン」を相次いで閉鎖するが、13年9月期は約3億6300万円の債務超過に転落していた。

 以降、業況は改善せず、全ての手形決済が困難な状態となっていた。追い込まれた光和創芸は、主要取引先のA社以外の手形決済を優先することを選択する。A社は、実は光和創芸に対して不当に高額な代金支払いを求め、光和創芸の業績悪化の要因となったとされる取引先だった。結果、A社の手形は決済不履行となり、光和創芸は13年6月に銀行取引停止処分となる。

 その後も通常通り営業するが、取引関係者の間で信用不安が広がり、複数の取引先から取引条件の変更を求められた。なかでも売り上げのウェイトが高い一部百貨店が、「買い取り」から、店頭で売れた時点で売掛金が発生する「消化仕入れ」への取引変更を要請したため、一時的に多額の返金債務が生じる事態となった。

 買い取りならば、商品が売れるかどうかにかかわらず、小売店が仕入れただけの代金がメーカーへと支払われる。しかし消化仕入れとなると委託販売の形となり、売れた分だけが小売店からメーカーへと支払われる。つまり小売店側からすると、光和創芸との取引を消化仕入れとすることで、リスクを低減したことになるのだ。

 主力取引先だった百貨店の取引条件変更によって、商品が売れないと入金されない状況が続き、光和創芸の資金繰りはひっぱくする。「蓼科高原バラクライングリッシュガーデン」の収入をアパレル事業に投入したものの、依然として苦しい資金繰りが続き、複数の取引先に対して支払い延期要請や支払いの遅れが頻発していた。

 15年2月期の年売上高は約12億8600万円までダウン。有利子負債が重く、債務超過額は約5億2100万円まで広がっていたなかで、不渡り手形を所持していた取引先から手形の代金請求を提起され、訴訟に発展する。和解交渉を続けたが、最終的には売掛金の大半を差し押さえられる事態となり、法的整理を余儀なくされた。

 その後、光和創芸の事業は、16年に新設された光和創芸へと移譲されることになり、今は東京都に会社を構える光和創芸によって「蓼科高原バラクライングリッシュガーデン」と「バラ色の暮らし」が運営されている。

phot 蓼科高原バラクライングリッシュガーデンのWebサイト

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