コラム
» 2019年09月03日 05時00分 公開

あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る(9):主要取引先に依存する経営への“警鐘” そごう倒産で破綻に追い込まれたアパレル企業に学ぶ (1/4)

成功には決まったパターンが存在しないが、失敗には『公式』がある。どこにでもある普通の企業はなぜ倒産への道をたどったのだろうか。存続と倒産の分岐点になる「些細な出来事=前兆」にスポットを当て、「企業存続のための教訓」を探る。

[帝国データバンク 情報部,ITmedia]

連載「あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る」

成功には決まったパターンが存在しないが、失敗には『公式』がある。どこにでもある普通の企業はなぜ倒産への道をたどったのだろうか。存続と倒産の分岐点になる「些細な出来事=前兆」にスポットを当て、「企業存続のための教訓」を探る。

第1回:格安旅行会社「てるみくらぶ」倒産の裏側に“キックバック依存経営”――多額の粉飾決算、社長らの詐欺

第2回:晴れの日を曇らせた着物レンタル「はれのひ」元社長の詐欺と粉飾決算――「成人の日に営業停止」の衝撃

第3回:スルガ銀と結託 “情弱”狙った「かぼちゃの馬車」運営会社の「詐欺まがいの手口」

第4回:太陽光ベンチャーを倒産に追い込んだ“制度の壁”――急成長企業の未熟さも足かせに

第5回:「経営陣の交代・奪還劇」が招いた倒産 “反社”関与もささやかれたエステ企業の粉飾決算

第6回:トラックレンタル業界の“異端児”が繰り広げた「違法すれすれの錬金術」――見せかけの急成長が招いた倒産事件

第7回:信用失墜が企業の「死」――親密取引先の破綻で連鎖倒産した“建機レンタル業界の異端児”

第8回:借り入れ依存度9割弱 金融機関の支援で「延命」されていた長野県有数の中小企業がたどった末路

第9回:本記事


 1900年に創業した国内最大級の企業情報データを持つ帝国データバンク――。最大手の信用調査会社である同社は、これまで数えきれないほどの企業の破綻劇を、第一線で目撃してきた。

 金融機関やゼネコン、大手企業の破綻劇は、マスコミで大々的に報じられる。実際、2018年に発覚した、スルガ銀行によるシェアハウスの販売、サブリース事業者・スマートデイズへの不正融資問題などは、記憶にとどめている読者も多いだろう。一方、どこにでもある「普通の会社」がいかに潰れていったのかを知る機会はほとんどない。8月6日に発売された『倒産の前兆 (SB新書)』では、こうした普通の会社の栄光と凋落(ちょうらく)のストーリー、そして読者が自身に引き付けて学べる「企業存続のための教訓」を紹介している。

 帝国データバンクは同書でこう述べた。「企業倒産の現場を分析し続けて、分かったことがある。それは、成功には決まったパターンが存在しないが、失敗には『公式』がある」。

 もちろん、成功事例を知ることは重要だ。しかし、その方法は「ヒント」になりこそすれ、実践したとしても、他社と同様にうまくいくとは限らない。なぜなら、成功とは、決まった「一つの答え」は存在せず、いろいろな条件が複合的に組み合わさったものだからだ。一方で、他社の失敗は再現性の高いものである。なぜなら、経営とは一言で言い表すなら「人・モノ・カネ」の三要素のバランスを保つことであり、このうち一要素でも、何かしらの「綻(ほころ)び」が生じれば、倒産への道をたどることになる。

 そしてそれは、業種・職種を問わずあらゆる会社に普遍的に存在するような、些細(ささい)な出来事から生まれるものなのだ。実際、倒産劇の内幕を見ていくと、「なぜあの時、気付けなかったのか」と思うような、存続と倒産の分岐点になる「些細な出来事」が必ず存在する。同書ではそうした「些細な出来事=前兆」にスポットを当てて、法則性を明らかにしている。

 本連載「あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る」では、『倒産の前兆』未収録の12のケースを取り上げ、「企業存続のための教訓」をお届けする。第9回目は「バラ色の暮らし」というブランドで一時は盛況を極めるも、百貨店そごうの倒産で業績が悪化し、倒産するに至った婦人服小売り、英国式庭園を運営していた光和創芸を取り上げたい。

――婦人服小売り、英国式庭園運営 光和創芸(現・KCA)

アパレルブランド「バラ色の暮らし」でファンを獲得し、全国の百貨店に出店展開する一方、イギリスのガーデニングに着想を得てオープンした「蓼科高原バラクライングリッシュガーデン」が大盛況となる。しかし主要取引先だったそごうの倒産でアパレル事業の売り上げが悪化し、資金繰りが悪化。同社ブランドの斬新なデザインを愛したファンは多かったにもかかわらず、業界不況を乗り越えられなかったのはなぜなのか。

phot 光和創芸が入居していた建物(写真提供:帝国データバンク)

英国式庭園のパイオニア

 光和創芸は1943年10月に創業、70年5月に法人改組したアパレル業者だ。72年に、取締役でゼネラルコーディネーターのY氏が、レースや花柄などをモチーフとしたアパレルブランド「バラ色の暮らし」を設立。草木染の布や花柄の斬新なデザインが人気を呼び、軽井沢や千葉県津田沼市に出店を果たした。

 その後、Y氏は、19世紀を代表する英国のテキスタイル・デザイナーで「モダンデザインの父」と称されるウィリアム・モリスに大きな影響を受ける。服飾の素材を調達すべくイギリスに渡った際に、モリスの美しい庭園と出会い感銘を受け、国内初となる英国式庭園を造る事業計画がスタートした。

phot 「モダンデザインの父」と称されたウィリアム・モリス(Wikipediaより)

 Y氏は本場の英国式庭園にこだわり、数カ月にわたって英国で数多くの庭園を訪問し、ノウハウを学んだ。さらに、イギリスを代表する著名庭園デザイナーに庭園の設計を依頼したほか、庭師や石工、植物・バラの研究家をイギリスから蓼科に招聘(しょうへい)し、ハイレベルな英国式庭園作りに取り組んだ。

 当時、イギリスの草花は日本でほとんど流通しておらず、英国から直輸入するなどゼロベースの状態から英国式庭園を作り上げていく。90年4月、長野県茅野市に「蓼科高原バラクライングリッシュガーデン」をオープン。あまりの庭園の美しさに多くの観光客が押し寄せ、蓼科高原を代表する観光スポットとして知名度が高まっていった。

 一方、主力のアパレル事業では斬新なデザインが注目され、全国の百貨店に出店する。

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