欧州最大規模の銀行である英HSBCは、2016年から声紋認証を導入。当初はメディアが意地悪な検証を行い、認証ができない例なども報じられたが、現在では、同銀行に口座を持つ160万人ほどが、この認証方法「Voice ID」を利用している。
この認証では、電話口で「My Voice is My Password(声が私のパスワード)」と話すことで、本人認証ができてしまう。現在では、英語のほか、中国語や広東語、スペイン語などのフレーズが登録できる。
登録時に声を録音し、それをもとに音声をマッチさせるだけでいい。オペレーターに、生年月日や口座のパスワードなどの情報を伝える必要もないし、認証は瞬時に行うことが可能で、時間も短縮できる。そして咽頭や声道、鼻腔などの形で変化する声の特徴だけでなく、発音やスピード、高さなど100以上の特徴を調べるという。
ただ心配なのは、その精度とセキュリティだ。「どれほど安全なのか」との問いに対して、同銀行は「詐欺師やハッカーたちはあなたのパスワードを予想したり盗み出したりできるかもしれない。だが、彼らにはあなたの声を再現することはできない。われわれは、音そのものではなく、音が作られるメカニズムを査定している。『Voice ID』は、誰かがあなたの声まねをしたり、録音を流したりしても、識別できるほど十分にセンシティブで複雑なものである。とはいえ、風邪をひいていても、喉に痛みがあっても、あなたのことは認識するのです」と答えている。
つい最近、HSBCはこの「Voice ID」がいかに同社にとって有効なものなのか、成果について発表している。それによれば、16年から19年4月までに、英国だけで1万5000件以上の詐欺電話が確認されている。こうした企てを察知して詐欺を防いだことで、同社は3億3000万ポンド(約430億円)以上を守ることができたという。
こうした詐欺行為は増加傾向にあり、19年1月だけで、HSBCは2000件の詐欺電話を確認している。これは前年同月と比べると3倍にもなる。その月だけをみても、「Voice ID」によって2450万ポンドの損失を食い止めたことになるという。
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