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アパレル、ウエディング……「キラキラ系業界の接客女子」が転職に行き詰るワナとは個人でなく構造的な問題(1/3 ページ)

» 2019年08月26日 07時00分 公開
[服部良祐ITmedia]

 アパレルの販売職、ウエディング、小売りの化粧品売り場にいる美容部員といった「接客系」の仕事は、女性のなりたい職業として一定の人気を得ている分野だ。これらの業界の持つ華やかかつ身近なイメージが、今も昔も若者を引き付けやすいと言える。

 ただ、こうした接客系の業務は体力や長時間労働が必要になりがちなことなどもあり、離職率も比較的高めの傾向にある。ただ、磨き上げた接客スキルが意外と次のキャリアにつながりづらく、異業種への転職に苦しむ女性も少なくない。人材業界ではこうしたハードルを指した「エプロンからネクタイ」という言葉まであるという。そこには個人の資質にとどまらない「キャリアパスの断絶」という普遍的な問題があるようだ。“キラキラ系接客女子”の転職の行方を追った。

photo 女性に人気な一方、キャリアの形成に不安も少なくない接客系業務(写真はイメージ。提供:ゲッティイメージズ)

憧れだったウエディング業界、でも「将来が見えない」

 石田藍さん(36、仮名)は新卒でウエディングの大手企業にスタイリストとして入社した。会社では新郎新婦に応対して結婚式で貸し出す衣装のチョイスを担当する係だった。

 もともと憧れだったウエディング業界や接客の仕事。ただ、業界歴が長くなるにつれて石田さんはキャリアに不安を感じるように。「(新郎新婦に)接客するスタイリストという仕事は、常に新しい感覚を持っていなくてはいけない。お客さんの年齢がだんだんと自分より若くなっていくのを見ると『あと何年、店頭に立っていいものなのか』と思うようになった」。待遇面でも、同じ接客系の業界に転職しても給与は上がりにくく、むしろ下がると確信していた。

 1社目の会社は4年弱で転職。異業種に行こうと当初は事務職を受けていたが「事務経験が無いとできない仕事が多く、接客業は強みにならないと痛感した」(石田さん)。結局、同じウエディング業界に、やはりスタイリストとして転職した。

photo 憧れのウエディング業界だったが……(写真はイメージ。提供:ゲッティイメージズ)

 2社目の会社では新規部署の立ち上げに参加し、アパレル系の別部署でも経験を積むなど、社内で一定の評価や地位を得てきた石田さん。ただ、あくまで自分の専門が「接客」であることへの不安はぬぐえなかった。「会社ではこの先のキャリアについて前例も無い。接客業を続けたままで自分の将来は見えづらかった」。

 石田さんは約2年前に改めて事務職への転職を試みたが、やはりうまくいかず。「接客業の業務内容は、実は(店舗の)売り上げ管理などとても幅広い。しかし、転職活動時は『接客しかしてこなかった人』と、ざっくり見られてしまっていると感じた。事務職の募集要項には『実務経験〇年以上』という内容がほとんどで、未経験者は経験者にかなわない。自分をどう売り込むか難しかった」と話す。

 結局、2019年に入って知人の紹介で3社目に転職した。アパレル系の会社だが業務内容は秘書や企画といった完全に事務職。長くスキルを磨いた接客の仕事とは別れを告げた。

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