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アパレル、ウエディング……「キラキラ系業界の接客女子」が転職に行き詰るワナとは個人でなく構造的な問題(2/3 ページ)

» 2019年08月26日 07時00分 公開
[服部良祐ITmedia]

異業種への転職にはハードルも

 接客系の業種は、昔から人材の流動性が高いとされてきた。17年の厚生労働省・雇用動向調査の「産業別入職率・離職率」によると、各業種で最も離職率が高かったのは「宿泊業・飲食サービス」で30%。次いで「生活関連サービス業、娯楽業」の22.1%となった。いずれも個人客への応対が多い業界だ。人手不足が慢性化する一方、人材の新陳代謝も激しいと言える。

photo 2017年の厚生労働省「産業別入職率・離職率」グラフ

 しかも、総務省・経済産業省による16年の「経済センサス活動調査」によると、産業別の従業員の女性比率上位には「医療、福祉」(72.6%)に続き、「宿泊業、飲食サービス業」(58.9%)、「生活関連サービス業、娯楽業」(57.5%)が並ぶ。やはり石田さんのような悩みを抱える女性は少なくないとみられ、ある人材大手の19年のアンケートでは接客系の職に当たる「販売・サービス職」で働く20〜30代の人のうち、7割強が異業種への転職を希望したというデータもある。

 パーソルキャリアが運営する転職サービス「doda」の大浦征也編集長は「ブライダルやアパレル、ホテル、美容部員といった業界は、華やかなイメージから志望する女性は多い」とみる。一方で仕事が夜間や週末に集中したり、体力重視だったりする内容から長く勤めるのが難しくなるケースも多いという。

 「こうした業界の離職率が高いのは事実。一般的にどの業種でも異業種に転じるハードルは同業種間の場合より高いが、特に販売・サービスの人材は人材業界でも独特とされており、異業種への転職には大きなステップが必要になる場合がある」(大浦編集長)。

営業職との「本質的な違い」

 一般的に接客業出身の人は、事務系のスキルが未経験な点が採用過程で不利だとよく言われる。しかし、大浦編集長は「ビジネスマナーやPCのスキルより、業務内容が『BtoC(一般消費者向け)』の仕事である点が大きい」と指摘する。

 大浦編集長によると、販売・サービスの業種は、接客そのものの「ホスピタリティー」が顧客への価値を生むサービス系と、接客はあくまで手段で、来店した客にモノを売って成果を上げる販売系のタイプがある。いずれも顧客は一般の消費者だ。

 一方、営業職は保険のように個人向けの担当もあるが、多くは「BtoB(法人向け)」の形をとる。さらに「基本的にこちらから顧客に仕掛けて売りに行く点が、販売・サービスと大きく違う」と大浦編集長はみる。「単なるビジネスマナーの習得といった話でない。例えば法人営業では今接している人が(商品購入の)意思決定権者でない場合があるので、それが誰かを見つけ出すようなスキルが必要になってくる」。どれも似たような「客と接してサービスやモノのやりとりをする仕事」に見えるが、必要とされるスキルの中身は大きく食い違うというわけだ。

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