デザインのプロが教える「5分でプレゼンを良くする」フォント活用術ビジネスに役立つデザイン&フォント術(2/3 ページ)

» 2019年08月29日 07時00分 公開
[菊池美範ITmedia]

フォント選びの注意点

 プレゼンにはどうせ自分のノートPCやタブレットを使うのだから、好きなフォントを自由に使えばいい――と思う人も多いだろうが、フォント選びにも注意すべきことはある。確かに「ケーブルでディスプレイにつないで表示する」「資料をPDFやJPEGで配布する」といった場合にはどんなフォントを使ってもいいのだが、複数人が共同で資料を作っている場合はそうもいかない。別のOSで作業をしていると、フォントのせいでレイアウトが崩れてしまうことも多いからだ。

 たとえ同じ会社であっても、支給されているPCが全員同じとは限らない。Aさんが使っているのはWindows 10だが、隣の部署のBさんが使っているPCはmacOS Mojaveだった――ということもある。社外の人と作業している場合は、なおさら注意が必要だ。お互いにストレスがたまらないよう、WindowsでもMacでも使えるフォントを選んでおこう。

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photo Windowsの標準フォントの1つ「メイリオ」を指定した文章(上)と、それをメイリオがインストールされていないmacOSで開いたもの(下)。下はメイリオをヒラギノ角ゴシックで代替して開いているため、文章の印象が変わってしまっている。場合によっては、改行位置が勝手に変わってしまうこともある

“違い”を出したいならメイリオから脱却せよ

 では、具体的にどんなフォントを使えばいいのか。私のお薦めは游ゴシックだ。

photo 游ゴシック体で文字が組まれたポスターの例。駅のプラットホームや改札口の内外で見かけた方も多いのではないだろうか

 職業柄、テクノロジー業界の発表会やイベントでスライド資料を見る機会は多いが、游ゴシックを使っている人はあまりいない。最も良く使われているのは、Windows環境でのフォント環境を大きく改善した立役者でもある「メイリオ」だ。

 メイリオも使い勝手がよく、プレゼンで使うには手堅いフォントなのだが、手堅いがゆえに使う人も多い。たくさんの登壇者がいる場では「あれもメイリオ」「これもメイリオ」という状況が発生する。使用しているテンプレートがありきたりなものであればなおさら、どれもような同じような文字組になり、似たり寄ったりな印象になってしまう。

 一方游ゴシックは、ポスターや駅内の掲示などにもよく使われているプロ御用達のフォント。使うとどことなくプロっぽい雰囲気を出せるため、メイリオのスライドばかりが続く中では、良い意味で目立つ。Windows 10で正式に使用許諾がされている美しいフォントなので、使ってみない手はないだろう。

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photo メイリオを使ったスライド(上)と游ゴシック体を使ったスライド(下)

 ただし、低解像度のディスプレイや古いプロジェクターで発表する場合には注意が必要だ。游ゴシックはフルHDや4Kの環境なら美しく読めるのだが、低解像度の環境ではそうもいかない。ピクセル数の限られた環境では、そうした環境を前提として作られたメイリオやMSゴシックなどの方が読みやすいこともある。

 具体的には、Windows 8.1以前で、表示スクリーンが左右1024ピクセル以下の環境であれば、メイリオやMSゴシックの使用をおすすめする。こうした環境の違いは、プレゼン前に確認が必要だろう。

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