「世界一真面目な労働者は日本人」と触れ回っては、いけない理由スピン経済の歩き方(1/5 ページ)

» 2019年09月03日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

 またしても日本の「働き方」のクレイジーさを物語る残念なデータが出てきてしまった。

 先日、株式会社パーソル総合研究所が公表した日本を含むアジア太平洋地域14の国・地域を対象とした就労実態調査のことである。

 詳しくは同社のWebサイトをご覧になっていただきたいが、この調査によれば、日本の労働者は「勤務先への満足度」が対象国中で最下位、「転職したい」という回答も、「管理職になりたい」と回答も最下位。その一方で、勤務先以外でも学習や自己啓発も「特に何も行なっていない」と回答した割合は46.3%とダントツで高かったという。

勤務先以外での学習や自己啓発活動について(出典:パーソル総合研究所)

 つまり、出世やスキルアップには興味なく、とにかく一度入った会社には、どんなに不満タラタラでもしがみつく、という典型的な「社畜根性」が浮かび上がってしまっているのだ。

 このメンタリティをさらに裏付けているのが、本調査で明らかになった「日本独特の仕事選び」である。最も重視するのが「収入」というのは他国でも同じだが、次にくるのが「職場の人間関係が良いこと」と「休みやすいこと」。これは他国ではほとんど見られない日本人労働者ならではの発想と言ってもいい。

 「職場の人間関係が良いこと」は台湾やタイなどでは7位、中国やインドに至っては10位。「休みやすい」に至っては13の国と地域では「圏外」である。では、よその国の労働者は仕事で何を重視しているのかというと、「自分のやりたい仕事であること」(台湾)、「自分の能力や個性が生かせること」(中国)、「仕事とプライベートのバランスがとれること」(ベトナムなど)である。

 要するに、日本以外の国の労働者たちは「仕事」の中身やバランスで選ぶが、日本人労働者は「人間関係」や「休み」という「職場の環境」で選んでいるのだ。この「会社に骨を埋める気マンマン」の仕事選びを、「社畜」というイメージと切り離して考えるほうが無理がある。

 働き方改革を進めるためには、まずはこの国民病と言ってもいい「ゆがんだ労働観」をぶっ壊すところから手をつけなくてはいけないのではないか。

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