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» 2019年09月11日 07時00分 公開

お茶屋さんのかき氷に行列:観光客を呼べなかった「静岡のお茶」が、若い女性を引き付けている理由 (4/5)

[加納由希絵,ITmedia]

「お茶で人が集まる」ことを実証したい

 「私たちにとっては、いつも見ている景色なんですけどね」。牧之原市で茶園を営む柴本俊史さんはそう話す。茶畑を使った観光コンテンツ作りに協力している生産者だ。

 柴本さんは茶葉を卸すだけでなく、自ら商品開発も手掛ける。それが、完全無農薬の釜炒り茶だ。釜で炒って作る柴本さんの緑茶やウーロン茶などは「(茶葉を)漬けっぱなしにしていても濃くなりすぎず、あっさりとした味。香りにも特徴がある」という。

 柴本さんのような生産者たちに協力してもらい、19年に始めた取り組みが「茶の間」だ。茶畑の真ん中に木製のデッキを設置。土日限定の予約制でその場所を貸し切りにして、当日は絶景を楽しみながら生産者からお茶の説明を聞き、その場で味わう“体験型”コンテンツとなる。

 現在は牧之原市のほか、静岡市や富士市など5カ所の茶畑に「茶の間」を設置。5月にテスト販売を始めると、当月分はすぐに完売した。雨天の場合は中止になってしまうが、反響は大きいという。8月までに約40人が体験。9月も10日時点で30人ほどの申し込みがある。問い合わせの半分は県外からだという。

標高350メートルの急斜面に広がる茶畑(静岡市の豊好園)
富士山と駿河湾を眺める茶畑(富士市の富士山まる茂茶園)

 柴本さんの茶園に設置されたデッキに座ると、周りを取り囲む茶畑の向こうに街並みを見下ろすことができ、さらにその先には海が見える。心地よい風が吹いて、喧騒から離れたのんびりとした時間が流れている。茶氷と同じように“写真映え”するコンテンツでもあるが、それ以上に“ここでしかできない体験”がある。生産者にとっては日常の風景でも、そこが新鮮さと驚きが詰まった場所になるのだ。

柴本さん(左)の茶園での「茶の間」体験の様子

 柴本さんは、茶の間の取り組みに協力することで「お茶で人が集まるんだよ、と実証したい」と話す。「お茶そのものだけでなく、提供の方法が重要。昔からあるものだからこそ、次の時代に残るようにアップデートしていかないと。お茶を楽しむ場が広がっていけばいいですね」(柴本さん)

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