日韓関係悪化でも… サムスンが日本企業と組んで開発する「絶対安全なスマホ」世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

» 2019年09月19日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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自動運転や遠隔治療まで対応

 ブループラネットワークスは、もともと「Appguard(アップガード)」という名のサイバーセキュリティソフトを提供していることで知られる日本企業だ。このソフトは、米国政府機関が使用していたサイバーセキュリティソフトで、現在は同社が販売している。同社はさらに、米情報機関の幹部などを取締役に招聘(しょうへい)し、世界水準でサイバー空間の安全性向上を目指している。

 アップガードも独特のサイバーセキュリティソフトだ。マルウェアを検知する従来型のセキュリティソフトとは違い、システムに害を与えるような「動作」を察知して、未然に阻止することでシステムの安全性を確保する。

 つまり、一般的なソフトのように、世の中にあるウイルスなどを検知して、同じものがPCに入っていないかを調べるのではなく、PCにインストールしているアプリケーションが、ウイルスなどによって不正な動きをしないかを監視する。そのため、サイバーの世界で最も危険だといわれる、世の中にまだ知られていないマルウェア(ゼロデイと呼ばれている)にも対応できる。ソフト自体は軽いし、世界で1日100万個以上も「発生」しているマルウェアのリストをいちいち同期する必要もない。

 そんなブループラネットワークスが開発するトラスティカ・モバイル・ギャラクシーは、安全なデータやコミュニケーションを提供するだけでなく、5Gなどが普及していく中で、自動運転や遠隔治療まで広範囲に使えるよう想定している。

 同社の関係者によれば、このセキュリティソフトは過去に一度も破られたことがないという。その技術力がスマホに注がれるのだから、かなりの安全性が期待できそうだ。特に企業など、外部に漏れては困る情報を扱う人たちは、この手のスマホの導入を検討したほうがいいかもしれない。

 もっとも、できれば個人でも利用できるバージョンもぜひ販売してもらいたいものだが。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最新刊は『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


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