リンガーハットの顧客満足度はなぜ3年連続1位? ちゃんぽんで“ひとり勝ち”のビジネスモデル新連載・飲食店を科学する(4/4 ページ)

» 2019年10月02日 07時00分 公開
[三ツ井創太郎ITmedia]
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他社がリンガーハットのモデルをマネできない理由

 長崎ちゃんぽんという分野で競合チェーンがいない大きな理由としては、やはり「リンガーハット」の持つ知名度の高さが挙げられます。1974年に現在のリンガーハットの原型となる「長崎ちゃんめん」を長崎市に開店して以来、70年代の外食産業急成長の波に乗って全国へ展開し、現在では694店舗の一大チェーン店となっています(19年8月時点)。しかしながら同社の強さを支えるのは知名度だけではありません。

 実は「ちゃんぽん」というメニューは、他のラーメンと異なり参入障壁が高いのです。その理由としてまず挙げられるのは「多くの野菜を使用する」ということです。先にも述べたように、リンガーハットのちゃんぽんは多くの野菜を使用している点が顧客からの支持を得ていますが、野菜は天候不順などの影響を受けやすく、年間を通じて安定した原料確保を行うのが難しいという背景があります。

 こうした中で、リンガーハットは694店舗の全国チェーンという利点を生かして、日本全国の農家と契約を結び、天候不順などによる仕入れ価格高騰リスクを軽減しています。さらには契約農家との長年の取り組みの中で、通常より大きなサイズのキャベツを生産するなど、原材料の質とコストの両面で他チェーンがマネできないようなことも行っています。

 調理工程にも特徴があります。一般的なラーメン店と異なり、ちゃんぽんには大きな中華鍋で具材を炒める工程があります。この工程がとても大変なのです。リンガーハットも2005年くらいまでは、オーダーが入ると大きな中華鍋で具材を炒めていました。しかし、これだと調理に力と技が必要で、味のバラツキも出やすくなります。そこで同社は店内に「ドラム式の鉄鍋」や「鍋スライドシステム」という独自のオペレーションシステムを導入し、調理工程の省人化と味の均一化を実現しています。

 さらに、店舗だけではなく本部のセントラルキッチンにも独自に開発した大型設備を多数導入しています。これらは設備投資額の面からも他社が簡単にマネできるものではありません。

 「安定的な原材料調達力」と「生産性の高いオペレーション」――この2つが他チェーンをよせつけない同社の強みとなっていると言えます。

 このように、幅広い顧客層=マルチターゲットに対して、それぞれのニーズを満たす商品をしっかりと研究し、顧客の声を真摯に受け止めていく企業姿勢。そして、これらの商品企画をしっかりとしたクオリティーで提供する為のオペレーション構築や技術開発が、リンガーハットが3年連続で顧客満足度1位を獲得している理由と言えます。

著者プロフィール

三ツ井創太郎

株式会社スリーウェルマネジメント。大学卒業と同時に東京の飲食企業にて店長などを歴任後、業態開発、FC本部構築などを10年以上経験。その後、東証一部上場のコンサルティング会社である株式会社船井総研に入社。飲食部門のチームリーダーとして中小企業から大手上場外食チェーンまで幅広いクライアントに対して経営支援を行う。2016年に飲食店に特化したコンサルティング会社である株式会社スリーウェルマネジメント設立。代表コンサルタントとして日本全国の飲食企業に経営支援を行う傍ら、日本フードビジネス経営協会の理事長として店長、幹部育成なども行っている。著書の「飲食店経営“人の問題”を解決する33の法則(DOBOOK)」はアマゾン外食本ランキングの1位を獲得。


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