苦戦している日高屋への“刺客”!? 増殖を続ける「中華食堂 一番館」の実力に迫る長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/6 ページ)

» 2019年10月16日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

味を無難にまとめている

 一番館は東京都中野区に本社を構える、「KVC一番館」という資本金1000万円の会社が経営する。

 設立は2005年10月で、池袋に1号店を出店。翌11月には阿佐ヶ谷にFC(フランチャイズ)1号店をオープンしている。以降、主にFCシステムにより店舗数を伸ばしてきた。

 一番館の店に行くと、看板に、「美、安、楽、早」と掲げてある。これは、「おいしい、やすい、たのしい、はやい」を意味している。中華において「旨い・安い・早い」を実現しようとする、チェーンの理念を表現したものだ。

 中華の麺飯、定食、お酒とおつまみなど、多彩なメニューを低価格で提供し、大半の料理はワンコイン以内。定食でも600円台までで、最高値と思しきスタミナ肉野菜定食と青椒肉絲(チンジャオロース)定食でも650円止まりである。

 最近の定食屋では「大戸屋」はもちろん、「やよい軒」ですら1000円を超えるメニューがあるのに、安く空腹が満たせる点では出色のチェーンだろう。ちなみに、日高屋の定食は「野菜炒め定食」(600円)と「ニラレバ炒め定食」(680円)を除けば、700〜720円の設定になっている。

 味は全般に渡って“普通”だ。「餃子の王将」「大阪王将」「ぎょうざの満洲」のようなギョーザを専門とする中華チェーンは、ギョーザの味を徹底的に極めようと努め、商品の圧倒的な魅力で根強いファンをつかんでいる。しかし、一番館の料理は、これといった個性がなくて総じて食べやすく、無難にまとまっているように見受けられる。このような料理の方向性は日高屋と似ている。

 一番館の「かけらぁ麺」などの汁は、たまりじょうゆのような味がするので、全く個性がないというわけではないが、どういう味だったのか、あとでよく思い出せないような料理が多い。逆にいうと、誰からも嫌われない料理を出しているのであって、大衆性を持っているのだ。

 実際に一番館で食べた人からは、「全般にさっぱりしているところは日高屋と似ているが、塩分が少ないように感じる」といった感想をよく聞く。後発だけに、味が日高屋より現代風になっている。

 「吉野家」は「うまい、やすい、はやい」をモットーとしており、一番館もファストフードとしてこれを踏襲しているが、それに「楽(たのしい)」が入っているのがミソだ。

photo 一番館の炒飯とミニらぁ麺のセット(500円)

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