クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

ヴィッツ改めヤリスが登場すると、世界が変わるかもしれない話池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)

» 2019年10月21日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 お台場MEGA WEB(メガウェブ)の発表会場で、ヴィッツの後継となるヤリスのベールが明かされるのを見ながら、筆者はついにこの日がやってきたことを極めて感慨深く受け止めた。実は風邪の発熱で少々意識朦朧(もうろう)としていたせいもあって、話の受け止め方が若干センチメンタルになっているのかもしれない。まあこの記事を書いている今も引き続きすこぶる調子が悪い。熱のせいにすれば少し論調が暴走しても許されるかとプラスに考えることにする。

ヴィッツの後継となるBセグメントのヤリス

TNGAの始まり

 2015年4月にトヨタは突然TNGA戦略のリリースを発表した。たぶんこれにいち早く注目したのは筆者くらいだと思う(15年4月の記事参照)。というより、あの漠然としたリリースの内容で記事を書こうと思う方がおかしい。今になって振り返ると「モジュール化」ではなく、バリエーション展開を織り込んだ設計だったのだが、それでもあれをトヨタの大転換期の始まりと推測した当時の自分を褒めてやろうとは思う。

 筆者はこの15年のTNGA発表まで、トヨタのクルマをほとんど信用していなかった。多分それは、クルマ作りの中で生じる各要素のプライオリティの付け方に深い溝を感じていたからだ。例えば乗り心地とハンドリング、ドライバーの着座姿勢と後席空間の広さ。そういう対立的要素の序列の付け方に極めて納得がいかなかったからだ。「そっちを優先するヤツとは友達になれないな」。そう思っていた。

 11月になると、ようやくTNGAの具体的説明が始まる(15年11月の記事参照)。以来4年間、筆者はトヨタのTNGA改革に対して終始疑り深い目で追いつつ、実際に出てきたクルマを一台ずつ検証してきた。その過程でトヨタはちゃんと結果を出してきた。

 筆者はTNGA以前から、トヨタの技術そのものが低かったとは全く思っていない。ただクルマを作っていく過程において、何を大事にすべきかというリファレンスがいつもズレていたと思っている。しかし、これまでプリウスでデビューしたGA-Cプラットフォーム、カムリでデビューしたGA-Kプラットフォーム、クラウンでデビューしたGA-Lプラットフォームと見てきて、そのズレを感じることがなくなった。もちろんデビュー時には細かい瑕疵(かし)があることはあるのだが、かつてのようにクルマ観そのものの断絶を感じることはもはやないし、問題点も随時改善が進んでいる。

 トヨタの歴史において、直近の4年間は、もっとも急速にクルマが良くなった時代といえるだろうし、より具体的にいえばTNGA以前と以後ではもう別の会社の製品だと思えるくらいに違う。いまやTNGA世代でないトヨタ車を買うのは止めるべきというのが筆者の偽らざる感想だ。

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