クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

ヴィッツ改めヤリスが登場すると、世界が変わるかもしれない話池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)

» 2019年10月21日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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混乱の時代に

 ヤリスは環状構造の強化などにより、ねじり剛性を旧型比で30%向上させた。また高張力鋼板やホットスタンプ材の導入などによって、類似装備のモデルで50キロの軽量化を達成した。おそらくはダイハツの良品廉価の思想も大幅に導入され、コンパクトカーのコスト構造を大きく変えてくるに違いない。実際に価格が発表されるまでは安くなるかどうかは分からないが、それでもコストパフォーマンスが向上するのは間違いないだろう。

ヤリスの構造

 ヤリスの登場は日本車黄金時代の再来となるかもしれない。実はグローバルマーケットが相当におかしなことになっている。その中心となるのは、米中経済戦争と欧州経済の破綻だ。本題ではないのでさらりとしか書かないが、米国は中国が力によって現状を変更することを徹底して認めないスタンスを取り始めた。内政干渉という批判には耳を貸す気がない。香港や台湾であってもそのスタンスは変わらないし、ウイグルにまでその原則は敷衍(ふえん)されるだろう。

 中国は今までのような親方共産党の経済戦略が通用しなくなった。その顕著な例はファーウェイだろう。そして米国内でこれを推進しているのは、行政ではなく議会だ。つまり行政の長である大統領ではなく、議会が超党派で中国と戦おうとしている。

 一方でドイツ銀行は巨大債務を抱えて、いずれ爆発するしかなくなっている。これが破綻すればEUの足下が大いに揺らぐ。そして欧中の蜜月時代は、両サイドから火の手が上がることになる。

 日本がこれらの影響を受けないなどという都合の良い話をするつもりはないが、どちらも爆心地ではない。インドとASEANを押さえる力は今日本が最も強い。既存経済圏に波乱が起きる時、日本は高い製品力をタイミング良くそろえ、燃えないエリアを市場として持っている。生やさしい道だとは思わないが、フォルクスワーゲンを待ち受けている運命と比較すれば、極めて明るい未来に思える。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。


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