ファッションECの市場への定着から、各サイトは競合も増えてきた。売上増や新規ユーザーの獲得を目指す場合には、価格での差異化に向かいがちだ。ファッションECとしての機能は、ZOZOTOWNをレファレンスに、各社平準化が進んできたことも大きい。しかし価格のコントロールは、ファッションブランドにとって生命線でもある。
品ぞろえと価格で競争が激化するファッションEC市場に、従来とは異なる競争軸を取り込れて注目を集めている企業がある。“個人が個人に売る”新しいファッションECサービスの仕組みとして「FOR SURE」を提供するLIDDELL(以下、リデル)だ。
このサービスで興味深いのは、ファッションECサイトとしての立て付けはZOZOTOWNなどと類似してるものの、消費者と各種ファッションアイテムとの間をつないでいるのがECサイト自身やブランドメーカーではなく、あくまでも“洋服の着こなしが大好きな個人”が担っている点にある。FOR SUREを運営するリデルは、2万人のインフルエンサーを抱える、企業と個人のマッチングサービス「Spirit」を運営しているインフルエンサーマッチングの会社だ。
リデル社長の福田晃一氏は「働きかた改革で副業が許容されるようになると、ファッションセンスのある個人が、ファッションECで影響力をさらに持つようになる。FOR SUREはそうした個人の力を生かして、これまでとは異なる“個性売れ”をもたらすサービスだ」と胸を張る。
リデルはSpiritに登録されているインフルエンサーの中から、トップクラスの人気を持つ女性500人を”シュアリスト”と名付け、専用アプリ「SURELIST」を配布。シュアリストは、アプリ内で選んだ商品を自分自身で購入する。そして、届いた洋服を自分なりに着こなし、メッセージを添えて写真とともに発信する。共有した写真や文章は、連動するInstagramのストーリーズでも公開される。
この「SURELIST」アプリと対になるのが「FOR SURE」。こちらはInstagramとよく似たユーザーインタフェースを持つファッションECアプリで、インフルエンサーの投稿に共感を持つフォロワーたちが、直接、共有されたアイテムを購入できる。
シュアリストをフォローし、新しいアイテムが共有されたときには通知が来たり、新しい着こなしが投稿されると通知が来たりする。
過去にそのシュアリストが購入した商品、あるいは同じ商品を購入した別のシュアリストが一覧できるようになっているなど、気に入ったアイテムや着こなし、色合わせなどから“シュアリスト”という人を通じて、お気に入りのアイテムをたどっていける動線が設けられているわけだ。
これにより「共感しているインフルエンサーが、どんな洋服を選びクローゼットに並べているのかを見せてもらう感覚」で買い物ができると福田社長は説明する。
インフルエンサーをハブとして、“1つの着こなし投稿”から、多様なアイテムへと広がりが出ていく作りは、インフルエンサー自身がお気に入りのアイテムを紹介するセレクトショップを持つようなものともいえるだろう。
ただし、セレクトショップとは異なり、個人であるインフルエンサーは在庫を持つ必要はない。単に自分が欲しいと思うアイテムを買い、着て、写真や感想などを投稿するだけだ。
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