購買動機は価格から共感へ――“個性売れ”に注目するファッションEC業界EC業界活性化の新アプローチ(2/3 ページ)

» 2019年10月28日 08時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

購買動機は価格から共感へ

 福田社長は「FOR SUREは商品を掲載するブランド自身がセールを行う場合をのぞき、FOR SURE側が割引きサービスを提供することはない」と話す。なぜなら、FOR SUREを通じた購買の動機付けは、価格ではなく“インフルエンサーへの共感”だからだ。

 FOR SUREに出店するアパレル会社、アーバンリサーチの清水樹二也氏(販売促進部オムニチャンネル課)は「ファッション誌への広告はもちろん、ネットでのリスティング広告、あるいはInstagramなどのSNSも重視してプロモーションをしているが、タイミング良く“欲しい情報”が当たれば効果的、しかし欲しくない情報を見せられると、SNSユーザーは嫌悪感を覚える」と指摘する。

 「Instagramは企業向けアカウントを有償提供しています。一般のIDでは購買動線のリンクを張れませんが、企業向けアカウントなら可能です。しかし企業アカウントからの発信は広告と同じで共感を得にくい上、ユーザーが商品ページに飛ぶだけで、販売実績とは無関係に送客手数料がかかります」(清水氏)

 そこでInstagramなどで多くのフォロワーを持つインフルエンサーへのギフティング(商品を贈ることで口コミ投稿を狙う手法)も行っているが、こうしたマーケティングに対して嫌悪感を覚える層も考慮するならば、一定の告知効果は期待できても、結果へと直接導く成功例を作るのは難しいのが実情だという。

 そこで注目したのが、インフルエンサーが自分自身で購入・発信するFOR SUREだった。清水氏は「私たちにとってZOZOTOWNは今も重要なチャンネルですが、FOR SUREでは、インフルエンサーの感性というフィルターを通じて、色やアイテムの組み合わせ提案が自然に生まれている。その仕組みに興味をひかれました」と語る。

 ポイントは、インフルエンサーが実際に購入した商品しか発信できない点。つまり、なんらかの報酬やギフティングを得るから発信するのではなく、自分が購入したアイテムを勧めている。この信頼感は従来のファッションECのマーケティングにはなかった要素だ。

シュアリスト(インフルエンサー)のセンスや着こなしがフォロワーの関心を引く。発信できるのは実際に購入したアイテムのみ

 FOR SUREの販売手数料は30%と、ZOZOTOWN(35%)などと比べて低く設定されている。しかも30%のうち7%は、購入者が参考にした投稿を行ったシュアリストに支払われる。シュアリストの投稿を促すために必要なPR費用も含むと考えれば、安価な設定といえる。

 インフルエンサー自身が買い物をし、買ったアイテムを発信。結果的にフォロワーがそのアイテムを購入したときにのみお礼が発生する仕組みのため、広告であることを明記する必要があるギフティングとは異なり、「#PR」タグが不要になる。また、予測不可能なPR成果に対して報酬を支払うのではなく、実売に応じた報酬を支払うだけでいい。

 セレクトショップ「LOVELESS」としてFOR SUREに出店する三陽商会の西垣卓氏(セレクトショップビジネス部)も「媒体を通じてブランド自身が発信するだけではなく、各アイテムをどう組み合わせ、着こなすか。ファッションのセンスや気付きを、企業ではなくファッション好きの個人が担うことで、より消費者に近づける」と、参加の理由について話してくれた。

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