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» 2019年10月24日 07時00分 公開

ナイキはなぜ中国に屈したのか 巨大市場を巡る“圧力”の実態世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

[山田敏弘,ITmedia]
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謝罪に追い込まれる外国企業 中国ビジネスの難しさ

 もっとも問題の本質は、中国による「圧力」である。そして、中国当局が外国企業に圧力を加えているという話は最近よく聞くようになった。今回のナイキの件も、そうしたケースの最新例にすぎない。

 例えば、米衣料品大手GAP(ギャップ)も18年5月、台湾やチベットの一部、南シナ海の島などが含まれない中国地図をTシャツにプリントして、中国から激しい抗議を受けている。中国でビジネスを展開していたギャップは謝罪し、Tシャツを撤去した。

 その前の1月にも、米ホテル大手マリオット・インターナショナルが、公式サイトで台湾や香港を中国とは別の国として掲載したことで、中国当局から反発を受けた。当局は同ホテルのサイトを1週間にわたって閉鎖する暴挙に出た。結局、同ホテルが謝罪して問題は収束したが、その後、逆に、中国の圧力に屈したとして、台湾のホテルチェーンからフランチャイズ契約を解除されている。

 2月には、ドイツ・ダイムラーが「メルセデス・ベンツ」のSNSで、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマの発言を紹介したことに中国が不快感を示し、同社は謝罪してそのSNSを削除した。米映画で知られるハリウッドでも、中国当局に内容についてあれこれ言われ、内容を修正することもあるという。

 大きな市場を持つ中国にかかれば、こうした話は少なくない。そして目をつけられた企業はことごとく謝罪などに追い込まれている。

 もちろん、営利を目的としたビジネスなら、ナイキの決定は間違いなく正しい。だがこれまで何十年もかけて築き上げたイメージがかすんでしまうのは、長期的に見ると正しい選択なのか。難しいところだろう。とはいえ、今後も中国は、自国の主張を貫くために、同じような締め付けを堂々と行うだろう。中国とビジネスをする企業はくれぐれも注意が必要になる。

 冒頭のユニクロの話に戻るが、ユニクロのケースでの韓国のやり口は、中国よりも言いがかりに近いし、断然たちが悪い。世界的にも知られている大企業のユニクロは、韓国側の主張に屈するのではなく、堂々と言い分をぶつけるべきだった。さもないと、どんなことでも文句を言えば日本企業をおとしめられるという悪しき前例を作ることになるからだ。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最新刊は『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


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