担当者によると、違反をしている企業の多くで違法だという認識がないという。昔からの慣行や関係性などで、何となく転嫁がなされず据え置きになっているケースも多い。
こうした転嫁拒否を防ぐために、13年に「転嫁Gメン」を立ち上げ、14年から本格的に活動している。Gメンと聞くと「麻薬Gメン」や「万引きGメン」といったイメージが強いが、中小企業庁の担当者によると、「転嫁Gメンは逮捕などをするのではなく、転嫁に関する周知活動がメイン」とのこと。特に8%への増税後に設立された法人では、転嫁に関して知らない企業も多いという。こうした企業を中心に足を運び、特措法の内容や取り組みの啓発を行っている。
違反が発覚するきっかけは、毎年行っている書面調査がほとんどとのこと。秋口から年末年始にかけて、国内にあるほぼ全ての事業所にアンケートを実施。回答のあったものを抽出し、違法性が高いと判断されたものから立ち入り検査や帳簿のチェックなどを行っている。ただ、通報したことをきっかけに取引先との関係性が悪化するのを恐れる企業も多い。回答されたアンケートにも、違反と思われる事例が記載されているが、連絡先の記載がなく、対応に困るケースも多いのだという。
こうしたいわゆる「報復行為」についても特措法で禁止されている。しかし、報復行為なのか、あるいは取引先を何社か比較検討した結果として取引がなくなったのか、判断が難しいという課題もある。「匿名性は保証するので、安心してちゃんと連絡先を書いた上での通報を」と担当者は呼びかける。
10月の増税からまだ期間も短いため、増税後に新たなに出た違反のケースについては「まだこれから」だという。例年通りアンケートを行い、年末年始ごろから調査や指導が本格化するとの見込みだ。
値下げ圧力をかけることで一時的な利益は生まれるかもしれないが、違反した企業として公表された際の社会的損害は測り知れない。こうした長期的な視野に立ち、適切な取引を交わすことが、企業に求められる。
【お詫びと訂正:2019年10月24日16時45分の初出で、2ページ目の見出しが「転嫁を防ぐための取り組み」となっておりましたが、誤りでした。正しくは「転嫁拒否を防ぐための取り組み」です。お詫びして訂正いたします。】
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