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» 2019年10月25日 11時09分 公開

10年間で大幅に労働者が減少:JR西、終電時間繰り上げ検討 労働環境の改善で 午後9時以降の乗客減も後押し

JR西日本は10月24日、終電時間の繰り上げ検討を開始したと発表した。終電から始発までの電車が走行しない時間に線路の保守などを行う従業員の労働環境改善が目的。JR西の発表によると、線路の保守作業には毎日100カ所以上で、1500人ほどの従業員が従事。土日に休みを取りにくかったり、深夜に作業したりすることから離職率も業界平均より高い。

[鬼頭勇大,ITmedia]

 JR西日本は10月24日、終電時間の繰り上げ検討を開始したと発表した。終電から始発までの電車が走行しない時間に線路の保守などを行う従業員の労働環境改善が目的。

深夜時間帯の負担軽減が目的(出所:西日本旅客鉄道のニュースリリース)

 JR西の発表によると、線路の保守作業には、毎日100カ所以上で1500人ほどの従業員が従事。土日に休みを取りにくかったり、深夜に作業したりすることから離職率も業界平均より高い。総務省のデータを基に同社が分析したところ、08年から18年の10年間で、建設業界全体の従業員減少率は9%だった。これに対し、同社グループ会社の線路保守を担う従業員は23%も減少した。

業界平均よりも大幅に従業員が減少(出所:西日本旅客鉄道のニュースリリース)

 担当者に聞いたところ、詳しい年齢別の分布は明かされなかったが、特に若年層の従業員が減っているという。「少子高齢化による労働者人口の減少もあり、こうした状況に危機感は持っていた」と話す。こうした問題を解決するため、同社ではこれまで主に「ハード面」での改善を行ってきた。例えば、線路の継ぎ目をなくしたり、線路の枕木をコンクリート製にしたりして、設備の強靭化やシンプル化を進めてきたという。

これまでに行ってきたハード面での改善(1)出所:西日本旅客鉄道のニュースリリース
これまでに行ってきたハード面での改善(2)出所:西日本旅客鉄道のニュースリリース

 今回の繰り上げについては、夜間に鉄道を利用する人が減ってきていることも後押しした。13年から18年の5年間で、大阪駅、京都駅、三ノ宮駅における平日午後9時〜11時台の利用者は平均して90%超にまで減少。午後5時〜8時台にかけては増加の傾向にあり、「働き方改革により、お客さまの帰宅時間が早まっているのも要因ではないか」と担当者は分析している。午前0時台においては、大阪駅では83%、三ノ宮駅では81%にまで減少している。一方、早朝では通勤や通学の利用が多く、特に減少はしていないという。こうした傾向が全国的なものなのか、JR東日本にも取材したところ、「今の時点でお伝えできることは特にありません」とのことだった。

 繰り上げは20〜30分単位で行うことを想定している。担当者によると、これまで終電の時間は繰り下げが続いてきた。ただ、その時間は数分単位。私鉄との接続などを理由に、ダイヤ改正の際に行っていたという。直近でダイヤの大幅な繰り上げを行ったのは、09年までさかのぼる。深夜帯において快速列車「新快速」の本数を増やしたことにより、数十分単位で繰り上げたという。現在大阪駅発で京都や兵庫方面への終電時間は、午前0時30分前後。仮にこの時間を午前0時まで繰り上げた場合、年間で10%ほどの作業日数を軽減できる試算だという。

夜時間帯における利用者の推移(出所:西日本旅客鉄道のニュースリリース)

 実際に繰り上げるかどうかは、私鉄の動向や深夜時間帯への経済的影響などを総合的に判断し決定するという。国土交通省近畿運輸局の調査では、19年7月における近畿圏の外国人宿泊者数は前年同期比で11.0%増。2.1%増だった関東圏と比較すると、大幅に伸びている。午後10時から午前3時までの時間帯における経済活動は「ナイトタイムエコノミー」と呼ばれ、主に観光面から最近注目が集まっている。観光客だけでなく、繁華街であれば居酒屋も書き入れ時の時間帯だ。働き方改革と経済活動をてんびんにかけ、JR西は難しい判断を迫られそうだ。

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