9月9日未明、令和元年台風15号が関東地方を直撃した。公共交通各社は雨風が強くなった前日から終電などを繰り上げて対処。翌日は計画運休を実施した。しかし運行再開時刻が予定より大幅に遅れたため、通勤通学時間帯は大混乱と報じられた。
計画運休について、JR東日本は始発から午前8時まで、他社もほぼこれにならう形になった。しかし実際は線路障害の発生や安全確認作業が予想以上に手間取り、運行再開は午後、あるいは夕方など大幅に遅れた。成田空港が“陸の孤島”と大きく報道された。鉄道は千葉県房総半島の被害が大きく、9月19日現在、JR久留里線は全線不通、小湊鐵道も一部区間で不通のままだ。
混乱の原因の一つに「振り替え輸送がなかった」という声があった。
なぜ振り替え輸送が実施されなかったか。あるいは、なぜ振り替え輸送が実施された路線と実施されない路線があり、各鉄道会社の足並みがそろわなかったか。振り替え輸送の仕組みから解説する。
9月9日の朝、鉄道各社は始発から計画運休を実施した(写真:ロイター)
振り替え輸送とは、路線に輸送障害が発生したときに、あらかじめ定期券や乗車券を所持する利用者に対して「他社の経路外路線の無償利用」を実施する制度だ。輸送障害の原因は人身事故、車両故障、停電などだ。
残念なことに首都圏ではほぼ毎日のように輸送障害が発生し、運休時間が長引く場合に振り替え輸送が行われる。だから、運休=振り替え輸送実施、と結び付けて考える人は多いだろう。今まで当たり前のように「A社の路線が止まればB社の路線で」「B社の路線が止まればA社の路線で」と振り替え輸送が実施されてきた。しかし、これはあらかじめ取り決められたわけではなく、路線が止まったら自動的に発動する仕組みでもない。
東京圏主要区間「混雑率200%未満」のウソ
お盆休みが終わり、帰省先から首都圏に人々が帰ってきた。満員の通勤通学電車も復活した。国も鉄道会社も混雑対策は手詰まり。そもそも混雑の認定基準が現状に見合っていないから、何をやっても成功できそうにない。その原因の1つが現状認識の誤りだ。
新幹線と飛行機の壁 「4時間」「1万円」より深刻な「1カ月前の壁」
所要時間が4時間以内なら飛行機より新幹線が選ばれるとされる「4時間の壁」。それよりも「1万円の壁」を越えるべき、というコラムが話題になったが、新幹線の“壁”は他にもある。航空業界と比べて大きな差がある、予約開始「1カ月前」の壁だ。
がっかりだった自動運転バスが新たに示した“3つの答え”
小田急電鉄などが手掛ける自動運転バスの2回目の実証実験が行われた。1年前の前回はがっかりしたが、今回は課題に対する現実的な解決策を提示してくれた。大きなポイントは3つ。「道路設備との連携」「遠隔操作」「車掌乗務」だ。
「びゅうプラザ終了」で困る人はいない “非実在高齢者”という幻想
JR東日本の「びゅうプラザ終了」報道で「高齢者が困る」という声が上がっている。しかし、そのほとんどが当事者による発言ではない。“非実在高齢者”像を作り上げているだけではないか。実際には、旅行商品や乗車券を手にする手段もサポートもたくさんある。
着工できないリニア 建設許可を出さない静岡県の「正義」
リニア中央新幹線の2027年開業を目指し、JR東海は建設工事を進めている。しかし、静岡県が「待った」をかけた形になっている。これまでの経緯や静岡県の意見書を見ると、リニアに反対しているわけではない。経済問題ではなく「環境問題」だ。
こじれる長崎新幹線、実は佐賀県の“言い分”が正しい
佐賀県は新幹線の整備を求めていない。佐賀県知事の発言は衝撃的だった。費用対効果、事業費負担の問題がクローズアップされてきたが、これまでの経緯を振り返ると、佐賀県の主張にもうなずける。協議をやり直し、合意の上で新幹線を建設してほしい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.