コラム
» 2019年10月30日 08時00分 公開

組織の生産性を上げる「楽しさ」の作り方:生産性の向上のみを追求して、生産性は向上するのか? 営業組織の具体的事例 (1/2)

[内田拓,ITmedia]

 こんにちは。スコラ・コンサルトのプロセスデザイナーの内田拓です。

 「楽しいと生産性」をテーマに5回にわたって連載していきますが、今回はそもそも「生産性の向上のみを追求して、生産性は向上するのか」という問いについて、営業組織を例に考えてみたいと思います。

生産性向上を追求しているように見えて実は……(写真提供:ゲッティイメージズ)

生産性の向上のみを追求して、生産性は向上するのか

 われわれが営業組織を支援する場合、最初に営業会議を見学することが多いのですが、こんなケースに遭遇することがあります。一見すると、生産性の向上──すなわち、売上の向上──を追求しているようですが、実はそうなっていないケースです。

 会議は「じゃあ、今月の売上目標と現時点の見込みを一人ずつ言ってくれ」というリーダーの言葉から始まります。

 ところが、スタートから、営業マンたちは伏し目がち。リーダーは人一人の目標と見込み(数字)を聞いて、「どうして数字が足りないんだ」「お客さまのところには行っているのか」「いつになったら本気になるんだ」などと詰めていきます。

 一人の営業マンが詰められている間、他の営業マンたちはその話を聞くことなく、自分が発表する内容について考えています。自分を守ることにせいいっぱいで、チームで協力して成果を上げようなどという雰囲気は微塵もありません。

 リーダーは全員の報告を聞いたあと、最後にこう言います。「全体的に数字に対する意識が足りない。数字を達成することは営業としての責任だ。一件でも多く回るように。以上」

 そして会議室には、ただただ疲弊感が漂っています。リーダーは部下の生産性(数字)を上げさせるために、ひたすら数字のみを追いかけています。しかしこれでは、生産性が上がるはずがありません。

営業会議では何を話し合うべきか?

 ここで、みなさんに質問です。この事例でいうところの「数字」は、目的でしょうか? 手段でしょうか?

 例えば、給料が30万円だとしましょう。私たちは30万円という「数字」が欲しくて、それを目的に働くでしょうか? 確かに30万円という金額は魅力的です。同じように働くのであれば、できればたくさんのお金がほしいと、誰しも思うでしょう。

 しかし、お金という「数字」そのもののために働いているのかというと、そうではなく、その30万円を家族のために役立てたいとか、自分の趣味を楽しみたいなど、実は、数字(お金)の先にそれを使用する目的があるからこそ、働いているのではないでしょうか。つまり、目的は大切な人や自分を幸せにすることで、その手段として30万円という数字が必要なのです。

 この目的と手段の関係は、自分の給料で考えると分かりやすいのですが、数字が売上目標に置き換わると、自分ごとである感覚が薄れ、目的と手段が簡単に入れ替わってしまいがちです。つまり、「月の売上目標は1000万円」と設定されると、あたかも1000万円を売り上げることが目的であるかのように勘違いしてしまうのです。

 では、1000万円という売上目標(数字)が手段だとしたら、この場合の目的は何でしょうか。実は、ここで考えていただきたい目的と、その目的をいかに達成するかが、営業会議で話し合うべき中心テーマとなります。

 働く理由(営業する理由)が「この数字を達成するためにこの行動が必要」のみだと、行動することの意味を感じることが難しく、行動しても楽しくなりません。楽しくないので行動の質が上がらず、当然、生産性も上がりません。やりがいのある仕事に必要なのは、「その数字を達成した先にいったい何があるのか」という問いです。

 この問いに答えるためには、「お客さまは誰か」「お客さまが喜んでいる状態を具体的に言うと何か」「お客さまから言われたい理想の言葉は何か」「お客さまを喜ばせるために何をするか」を考えなくてはなりません。そして、「結果として数字はどうなるのか」と考えます。

 「お客さまへ貢献している姿」と「その結果として得られる数字」が、つながりのある物語として語られる必要があります。このつながり(物語感)が行動に意味を与え、仕事に「楽しさ」をもたらします。

 つまり、営業会議の中心テーマは「お客さまをどう喜ばせるか」です。生産性の高い営業組織では、「お客さまを喜ばせることが目的で、喜ばせ続けるための手段として売上・利益が必要である」という、目的と手段の関係が共通認識になっているのです。

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