お客さまをどう喜ばせるか──すなわち、自分たちが顧客に貢献している姿──をより具体的にイメージするために、おすすめしたい方法があります。チーム内で使う言葉の定義、自分たちがなんとなく考えている定義(Before)と、営業が楽しくなる定義(After)を話し合うのです。例えば、次のような内容です。
ここであげた定義は、実際にある営業チームで話し合ってもらったときに出てきた言葉ですが、これらの言葉(定義)をまねして単に取り入れればいいということではありません。
そのチームは、この他にもたくさんの言葉の定義を話し合う中で、「自分たちはお客さまにとってどう役立つ存在になりたいのか」を真剣に考えるようになっていきました。その結果、「今までの自分たちは、お客さまが『欲しい』と言ったものをただ売っているだけだった」ということに気付きます。そして、「これからは『お客さまが気づいていない、本当に必要なもの』を提案して、お客さまの期待に応えよう」という、自分たちがお客さまへ貢献している姿を具体的にイメージできるようになりました。
これは、リーダーが一方的に「御用聞き営業から提案営業に意識をシフトさせなさい」と精神論のように言っても起き得ない変化です。定義を外から持ってくるのではなく、自分たちで具体的に話し合い、自分たちの言葉で定義し直すことに意味があるのです。
お客さまへの貢献の姿が見えてきたら、「そこに向かって自分たちは具体的に何に力を入れ、その行動が結果としてどういう数字につながるのか」を考えます。そうすることで、上司やお客さまに言われたことをただやるのではなく、「狙って仕事をする」ことになります。
自分から仕掛けていくことで、目標が「追われるもの」から「追うもの」に変貌します。そして、この変化が仕事に「楽しさ」をもたらします。
冒頭でも紹介したように、多くの営業会議ではどうしても、売上目標と現時点の見込み、案件進捗が議題になりやすく、常に目標に追われる感覚になり、「楽しさ」を感じない状態になりがちです。しかし「楽しさ」は、生産性を上げる上において欠かせない重要な要素です。楽しさは、やる気の源泉だからです。
仕事を楽しくする方法はたくさんあります。「チームで勝ちパターンを共有する」「ロープレを工夫する」「個人の強みを生かす」などです。そのどれもが生産性を向上させることにつながります。
しかし、私が最も効果が高いと考えているのは、「お客さまをどう喜ばせるか」をチームで対話し、仮説検証サイクルをみんなで回すことです。それは、仲間と楽しむ実験のようなものだからです。「こうしたらお客さまは喜ぶんじゃないか」という仮説をチームで対話しながら考え、検証していくプロセスこそが、仕事に「楽しさ」をもたらします。
その中で、「最近、お客さんとの間でうれしかった出来事、やりがいを感じたこと」を共有し合うと、さらに楽しさは増します。まずは、ここに集中して「楽しさ」をつくり出すことが、生産性を上げるキモになると考えています。
株式会社スコラ・コンサルト プロセスデザイナー。1978年東京生まれ。上智大学卒業。大学卒業後、大手家電量販店での突出した販売実績を買われ、大手人材派遣会社で販売員教育の仕組みづくりを行う。
数多くの販売員を育成する中で人材開発に興味を持ち、法人向け教育研修事業を専門とする研修会社で営業に従事。その後、戦略マネジメントコンサルティングファームでの営業兼コンサルタント職を経て、スコラ・コンサルトに入社。
「一人で悩みを抱える営業もチームになれば相乗効果で売上をあげられる」を信条とし、組織風土改革のパイオニアであるスコラ・コンサルト30年間の知見をベースに『チーム営業』メソッドを開発。企業規模、業種を問わず幅広く営業支援を行っている。ドラえもんと同じ誕生日で、比較的かためのプリンをこよなく愛する。
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