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» 2019年10月31日 06時00分 公開

京都在住の社会学者が斬る:京都が観光客でパンクする!? 古都を襲う「オーバーツーリズム」の暴走 (3/4)

[中井治郎,ITmedia]

人口150万人の京都市が外国人客で“渋滞”

 しかし、多くの人の予想を超える増加とは、言い換えるならば「暴走」である。この暴走が観光にかかわるさまざまな場面で問題を巻き起こすこととなった。そして世界各地で被害が叫ばれてきたオーバーツーリズムの波が、ついに日本にも到達する。その最前線であり、最たる“被災地”が、世界でもっとも人気のある観光都市の1つであり、日本を代表する古都、京都なのである。

 「この時期、京都行くやつはドM」お花見の頃、ゴールデン・ウイーク、夏の祇園祭(ぎおんまつり)、そして紅葉の頃など、観光都市・京都が世界中の観光客でごった返す行楽シーズンになるとインターネットでしばしば見かける決まり文句である。僕は京都に本部を置く大学で講義と研究をしながら、現在、京都で暮らしている。ネットの読み人知らずの書き込みといえども、その愚痴(ぐち)とも警告ともつかない独り言は身に染みるくらい、よく分かる。

 例えば花見や紅葉の季節などには全国のニュースや情報番組で、押し掛けた観光客で身動きもとれないほどの京都の名所の混雑がまるで風物詩のように報じられる。しかし多くの住民はもちろんそんな時期にわざわざ観光名所には近寄らない。テレビで近所の寺の混雑を眺めるのみである。そしてこの時期は観光名所だけにとどまらず、市内各所の交通が「いつも通り」マヒしているであろうことも知っている。そして呟くのだ。「はあ、やっぱり今日は出掛けるの、やめとこか」

 そもそも京都市の人口は150万ほどである。これをもし関東の都市に置き換えるなら川崎市と同程度の人口規模ということになる。しかし、京都は山に囲まれた小さな盆地であり、「どの飲み屋で終電を逃しても歩いて帰れる」といわれるほどに狭い。そこに、天皇が居(きょ)を構えていた京都御所、そして市内だけでも14件の世界遺産をふくむ広大な敷地を持つ離宮や神社仏閣がひしめきあっている。

 さらに厳しい都市景観行政のため市街地の狭い空間を有効に利用するための高層ビルやタワマンの建設もできない。そんな窮屈きわまりない街に150万人が押し込められているのだ。そこに毎年5000万人以上の観光客が押し寄せている。それが古都・京都の実情である。

 とくに2011年度には50万人程度であった外国人宿泊客数はその後、誰も予想していなかったようなスピードで激増し、2018年にはその約9倍である450万人にまで膨れ上がった(外国人観光客数全体ではおよそ805万人)。いまや有名な観光名所にかぎらず、京都のあらゆる場所で彼らが大きなキャリーケースを引っぱりながら歩いている、いや、“渋滞”している姿を見ることができる。

photo 京都市の外国人宿泊客数と観光消費額

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