インバウンド促進の旗を振る国としてもオーバーツーリズムは無視できない問題となっており、観光庁内に「持続可能な観光推進本部」を設置、重要課題としてこれに取り組む方針を発表している。しかし一方で2019年6月に京都の現状を視察に訪れた菅官房長官は「一義的には地方自治体の問題だと思う」と発言、まずは地域で対応すべきとの立場を固持している。つまりは「地元でなんとかしろ」ということである。
一般的にオーバーツーリズムとは観光客が地域にもたらす利益と地域の負担のバランスの問題であるといわれる。どれだけ「迷惑」をかけられていたとしても、観光客および観光産業が地域にもたらす利益を地域の人々が感じているのであれば「観光が過剰である」とは意識されないのだ。つまり、オーバーツーリズムは問題化されないということである。
しかし、大量の観光客を受け入れても観光客向けの商業施設やホテルなどの観光産業にかかわっている人以外にはほとんど利益がないとなっては、地域住民の多くにとっては「観光客なんか迷惑でしかない」ということになってしまうのも無理はない。
いつもはいけ好かない京都人が、得意のいけずも通じない観光客の大群に困り果てる様子に留飲を下げたい! そんな「京都ぎらい」が、この記事に目をとめてくれた読者のなかにいないとも言い切れないが、そんないじわるな読者のためにも、ここで1つ重大なタネ明かしをしておかなくてはいけない。京都の観光客の数は、じつは「いうほど増えてへん」のである。
観光客の引き起こすさまざまな問題に京都の市民が悲鳴を上げるオーバーツーリズム的状況が大きく問題化されるようになってきたのは、15年前後からであるといわれている。しかし京都を訪れる観光客数が5000万人を突破した08年以降、その数がピークを記録した15年でも5600万人ほどなのである。しかも、その後は減少傾向にあって18年には5275万人まで数字を下げている。
つまり観光客数は「いうほど増えてへん」うえに、近年ではむしろ減りつつあるのである。ではなぜ、京都のオーバーツーリズムは深刻化したのだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング