クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

「技術の日産」の魂は、死んでいない アライアンスの行方は?(2/4 ページ)

» 2019年11月07日 07時33分 公開
[高根英幸ITmedia]

プラットフォーム開発で衝突、想像を絶する生みの苦しみも

 そもそもFF小型車作りに関しては、歴史もノウハウもあるルノーが、日産が作る小型車のプラットフォームを黙って受け入れるわけがない。お互いの主張を盛り込んで共通のプラットフォームを作り上げるのは、想像を絶する両者の衝突が繰り広げられた。

 第2世代ともいえる現行のプラットフォームでは、日産とルノーがセグメント別に役割分担して、それぞれ日産主導、ルノー主導のプラットフォーム開発を行っている。それでも要所要所にお互いの意見を取り入れることで、長年のクルマ作りで培ったノウハウをうまく組み込み、優れたプラットフォームを作り上げることができるようになった。

 フォルクスワーゲンの「MQB」のように、セグメントを超えて使えるスケーラブルなプラットフォームは例外とすると、自動車メーカーはセグメントによって決まったプラットフォームを使い、ボディや内装、足回りのセッティングなどでキャラクターを演出し、それに見合った走行性能を作り上げるのが一般的な手法だ。

 それに対して、日産とルノーが作り上げた「CMF」というシステム形式のプラットフォームは、エンジンコンパートメント(エンジンルーム)、フロントアンダーボディ、コックピット、セントラル&リアアンダーボディ(後席及び荷室)にそれぞれのブロックを分けたモジュール構造だ。その組み合せを変えることで、さまざまな仕様のクルマを生み出せる。

ノートに使われているVプラットフォームは、当初はマーチ、キューブ用として登場。その後、ホイールベースを拡大しノート、シルフィに発展。エクストレイル用のサスペンション回りを使ってジュークを生み出し、セントラル&リアアンダーボディを専用開発することでNV200まで作り上げている

 しかも、このCMFはセグメントを超えてモジュールの組み合せを行う事で、幅広い車種展開を可能にしている。これをプラットフォームと呼んでいいのかという意見もあるかもしれないが、この構造にすることで異なる市場のユーザーニーズにも柔軟に対応できる。これはグローバル戦略とルノーと日産の折衝案という、2つの問題の解決策となったのである。

 そんなふうに複雑な構造となりつつもまとまっていたのは、一時はルノーと日産のトップを同時に務めたゴーン被告の圧倒的なリーダーシップ力があったからだ。日産GT-Rという日本が誇るスーパースポーツを開発することができたのも、ゴーン被告の指示があったからこそであった。

 今後はそうしたトップダウン型の経営ではなく、日産社内でも3人で協議して物事を進めていくことになる。それで果たして魅力的なクルマを生み出していけるのか、やはり大いに気になる。

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