金融庁 金融レポート2019を読み解く 金融デジタライゼーションは実戦段階

» 2019年11月25日 15時29分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 金融庁が毎年8月に公開する「金融レポート」。金融行政の施政方針を表す重要なレポートだ。これを、特にFinTechの観点からどう読み解くか。11月22日にマネーフォワードが開催したイベントでの、神田潤一執行役員の講演から。

金融デジタライゼーション戦略は実戦段階へ

 まず注目なのが、金融デジタライゼーションだ。重点施策の1つ目として、金融デジタライゼーション戦略を挙げているが、18年版の「デジタライゼーションの加速的な進展への対応」という表現から、19年版では「金融デジタライゼーション戦略の推進」と表現が変わった。

 神田氏は、「金融デジタライゼーション戦略の推進は、昨年に比べて実践段階に入った」と説明。特に重視されているのが、データだと説く。データの利活用による高度なサービス提供を進めるため、情報銀行の活用も含め、金融機関の取り組みを促進するというのがポイントだ。

 また、レポートのタイトルは「利用者を中心とした新時代の金融サービス」となっている。基本姿勢としても「……金融庁は、『金融育成庁』として、金融サービスの多様な利用者の視点に立ち……」と、利用者という表現が各所に出てくるのが18年との違いだ。

 「データをベースにした、利用者の深い理解に基づいて、適切で納得性の高いアドバイスとソリューションを提供すること」(神田氏)が、19年の金融庁の方針だと捉えられる。

3メガバンクの対応

 こうした金融庁方針に沿って、3メガバンクも戦略を立てている。共通の方向性は、対面チャネルだった支店を減らし、オンラインチャネルを強化していくこと。一方で、残った対面ではコンサルティング能力を強化していくことだ。

「チャネル改革」を掲げる三菱UFJ銀行(=19年度中間期決算資料)。「店舗はこれから50%まで減っていく。一方で機能特化型店舗が増えていき、ここではコンサルなどを提供する」(神田氏)
デジタライゼーションへの取り組みと店舗改革を掲げる三井住友銀行(=SMBCグループIR Day 資料より)。「支店は減っているが、店頭で富裕層への販売額が足元増えている。店舗改革を通じたコンサルティングを強化する狙いだ」(神田氏)
(=SMBCグループIR Day 資料より)
みずほ銀行が挙げた重点戦略(=MIZUHO IR Day資料より)。「来店客数はかなり減ったが、ダイレクトは数倍に。人員は減らしていき、国内拠点も減るが、チャネルがオンラインに変わってきている。対面コンサルの強化と、利便性の高い非対面サービスを向上させて、収益へつなげる」(神田氏)

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