ここまで考えると、ゴンチャには、自社の抱える課題をプロ経営者の原田氏に解決してもらう狙いがあると思われる。ここで、ゴンチャが原田氏に解決してもらいたい課題は主に2つあるのではないかと筆者は考える。
それは、フランチャイズ戦略と、商品モデルの再構築だ。原田氏はこの2点について、マクドナルド時代に酸いも甘いも嚙(か)み分けている。
まず、フランチャイズ戦略について原田氏の実績を振り返ってみよう。原田氏は、07年から13年にかけて、マクドナルドにおける直営店のフランチャイズ化を推進した。これにより、本部は管理機能と商品開発に注力させ、人件費のコスト削減にも成功した。しかし、フランチャイズ化によるサービス品質のばらつきにより顧客満足度の低下ももたらした。
ゴンチャもフランチャイズ経営を推進しているが、やはりフランチャイズ推進はコスト削減というメリットの裏に、ブランド価値の毀損リスクが伴う。原田氏はかつて店舗運営をフランチャイズオーナーに放任して失敗した。その経験をゴンチャでは各店舗への行き届いた教育・管理へ昇華させられるかが焦点となるだろう。
次に商品モデルについての見直しであるが、実はこれも原田氏の得意分野であった。原田氏は、「100円マック」を日本に導入。低価格商品で集客し、リピーターの獲得に成功した。そして、集めた顧客に「ビッグマック」や「クォーターパウンダー」といった高価格帯の商品を宣伝して客単価を上げた。その結果、既存店売上高を8年連続でプラスに導く業績の立て直しに成功し、一時は「原田マジック」などともてはやされた。しかし、コンビニの100円コーヒーなどによる顧客流出や、高価格帯商品の定着が振るわなかったことなどもあり、退任までの2年間で大きく売上高を下げてしまうこととなった。
ゴンチャのメニューは、新規参入したカフェ系チェーンなどが提供する安価なタピオカ飲料と比較して、高価格な部類に位置する。タピオカ飲料は原価が安く、作り方も簡単だ。そのため、タピオカ飲料は今後、熾烈(しれつ)な価格競争に陥る可能性が高く、ゴンチャもそのあおりを受けるかもしれない。そこで原田氏が推進した100円マックのように、廉価な商品をリリースし、高品質な茶葉を使用した主力商品との住み分け、ないしはブランドの分割という抜本的な改革を実施するなどといった戦略を実行するのではないかと予想する。
実は、失敗した経験のあるプロ経営者を起用することは理にかなった行動だ。自社の社長が失敗すると経営が傾くことすらあるが、他社で失敗した社長は、失敗で得た知見を自社の経営に生かせるだけでなく、失敗によるコストの清算をその会社で済ませているからだ。
ここまで考えると、原田氏はむしろタピオカブーム終焉(しゅうえん)の救世主といった見方もできるのかもしれない。
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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