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» 2019年12月07日 07時00分 公開

GDP予想を、どのように株式投資の判断に利用すればよいのかKAMIYAMA Reports(2/2 ページ)

[神山直樹,日興アセットマネジメント]
日興アセットマネジメント
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 例えば、名目GDP成長率が1%で、賃金上昇率が0.1%と想定できるとしよう。仮にGDPに占める営業余剰の比率が30%とすれば、1%の成長のうち、70%は賃金上昇率の0.1%の貢献(0.07%)となる。残りの30%で0.93%の成長を支えるとすれば、営業余剰の成長率は、3.1%必要になる。

名目GDPと一株利益の成長率推移

 このようにGDP成長率の予想は、賃金上昇率の想定を通じて企業収益の想定をもたらす。一般に企業収益の成長率は、GDP成長率よりかなり高くなる。もちろん、雇用者報酬に比べて成長率が高い分、ブレは大きくなる。GDPを単純化すると、“結果として”企業収益と賃金に分配される。“結果として”とは、賃金は労働市場で決まり、収益は売り上げからもたらされる、という点を、恣意的な分配と混同しないように、という意味だ。

 このように、営業収益の成長率を日本企業全体(GDP)の観点で把握した後、TOPIXあるいは上場企業のみに転換(大企業・製造業の比率が高まる)し、さらに営業収益を純利益(EPS)に転換(平均的な利益率などを利用)して、EPSの予想成長率を設定する。最後に、銘柄別のボトムアップで計算した予想成長率と比較して蓋然性を確かめる。

データ、情報、判断の違い

 ここまでGDPと企業収益の関係を簡単に説明したが、投資家が自身で予想することを勧めるためではない。GDPの予想と株価指数の利益に基づく予想との距離を感じてもらうためだ。2018年の終わり頃や今年の夏頃に「景気後退懸念」が強まった。これはGDPのマイナス成長懸念だ。雇用者報酬がある程度安定しているとすれば、マイナス成長はその多くを企業収益の悪化で説明されることになる。市場全体の企業収益がマイナスになるということは非常に大きなショックが起きた時に限られよう。米国の雇用や賃金が横ばいで成長率が低下したとしても、マイナスになるということはかなり大きな理由があるはずだ。GDPと消費や設備投資のみならず、供給面の賃金と企業収益との関係が分かっていれば、経済動向を示すニュースと株価市場動向を結びつけやすくもなるだろう。

 よくストラテジストはどんな情報を見ているのか、と質問される。そこで、データ、情報、判断、の違いを確認しておこう。GDP成長率が1%である、というデータがあるとする。その前年は0%、来年の予想は1%であったとすると、データは並べるだけでも情報になる。このレベルの情報は、どこにでもあって入手に困らない。問題は、その情報を「良い」「悪い」さらに「大事」「どうでも良い」に分類・判断することが難しいことだ。インターネット上などに多くの「判断」が提示されているが、判断は、投資家の属性(例えば家族構成、収入、仕事など)と投資目的(長期的か短期的かなど)によって異なるので、自身の状況に応じた適切さを「判断」するよう心がけたい。

筆者:神山直樹(かみやまなおき)

日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト。長年、投資戦略やファイナンス理論に関わってきた経験をもとに、投資の参考となるテーマを取り上げます。

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