老後2000万円問題で注目されたテーマの一つに、老後に向けた資産を用意できている人と、できていない人の違いがある。これは、投資を行って資産を増やせている人と、そもそも投資に回す余裕などない人の差でもある(6月12日の記事参照)。老後資金を自助努力で作るために、金融業界は投資教育に力を入れるとともに、制度や商品に工夫を凝らしてきた。その結果、どのような変化が起きてきたか。
フィデリティ投信が1万人のビジネスパーソンに行った調査によると、現役世代の投資状況に変化の兆しが出てきた。キーワードは「500万円」だ。
調査によると、ビジネスパーソンの中で投資を行っている人の比率は37%。しかし、そこには年収500万円の壁があるという。フィデリティ退職・投資教育研究所の野尻哲史所長は、次のように話す。
「300万円以下だと投資家比率は21%で、年収が上がるにつれて比率が上がっていく。2000万円以上だと4分の3が投資をしている。分岐点が年収500万円。ここを超えると、投資家比率が半分を超えてくる」
年収500万円を超えないと、投資に振り向ける金銭的余裕がないのだろうか。実は、2019年に入って、ここに変化が生じてきている。300万〜500万円未満の層の投資家比率が、16年から7.1ポイントも増加したのだ。
つみたてNISAやiDeCoの認知が広がり、つみたて投資がこの層にも広がっているのではないかと野尻氏は見る。「まとまった資金がなくても投資ができるという意識が広がっている。積み立て投資を始めているのではないか」
これは「投資をしない理由」というアンケート結果にも表れている。これまで「投資をするだけのまとまった資金がないから」というのが最大の理由だったが、これが急速に減少した。「14年にNISAが導入され少額投資の認知が上がった。まとまったお金がなくてもできるという認識が広がったのではないか」(野尻氏)
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